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新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの感染拡大により既に世界中の経済に影響が出ていますが、シネマ業界も例外ではありません。業界内での動きについて記しておきたいと思います。

世界各地で閉鎖される映画館

当初感染が確認された中国では早くからすべての映画館が閉鎖されましたが、ここに来て感染拡大に歯止めが掛かったことから、一部の劇場で営業が再開されてきたようです。

感染拡大が緩やかな日本では注意喚起や一部での入場制限は行われているものの、現在でも完全閉鎖されている劇場はないようですが、爆発的な感染拡大に対する警戒が叫ばれている中で、安心できる状況にはなさそうです。

感染拡大が治まらない欧米諸国の状況は深刻で、殆どの映画館が閉鎖されています。

米国では NATO(読み:“ネイトー”、全米劇場所有者協会)が米国議会と政府に対して、劇場経営と15万人の劇場従業員の生活を支援するための施策(固定費軽減のための融資保証、従業員に対する税制優遇、閉鎖に関わる費用の軽減、劇場再稼働時に損失回収するための税制優遇)を要求し、また NATO 自身も積立金100万ドルを職を失った劇場従業員のために支出するとのことです。

一方、欧州では UNIC(読み:“ユーニック”、欧州シネマ業界連合)が各国の政府に対して、欧州は『シネマ』誕生の地であり、その文化的な価値を守り続けるべきという信念のもと、このシネマ業界がこれまでに経験したことのない困難を乗り越えるために、今後数ヶ月に渡り可能な限りの支援を行うように要請しました。

ドライブインシアターの復権?

映画館のように閉鎖された空間に不特定多数が密集することで感染拡大のリスクが高くなるのであれば、特定少数毎に隔離された自動車内で映画鑑賞を楽しめるドライブインシアターなら安全だろうということで、一部のドライブインシアターを見直す動きもあるようです。

ただ、現在使用可能な設備は品質・スクリーン数ともに限られており、現行の映画館の収益を置き換えるには程遠いと言わざるを得ません。

新たに設備を作るのであれば、昨今注目を集めている LED シネマディスプレイを使うのが良いのでは?と冗談半分に言う人もいます。

確かにドライブインシアターなら音響はカーオーディオを使用することになるので、LED シネマディスプレイの課題である音響問題を回避することは可能ですが、屋外に恒久的に設置するとなると映像品質、耐久性など解決しなければならない別の課題が噴出しそうです。

ストリーミングサービスによる家庭での映画鑑賞?

より現実的な代替方法として語られているのが、Netflix や Amazon Prime Video などのストリーミングサービスやケーブルテレビ、衛星放送を利用した家庭での映画鑑賞です。

今回の感染騒動よりかなり前からストリーミングサービス専用の公開作品も数多く作られており、将来的には映画館は要らなくなるという極論を唱える人もいます。

ただ、家庭用のテレビ画面やホームシアターシステムで楽しむことができる映像と音声はスペック上は映画館向けのものと比べると多くの点で劣っているため、高品質の映像と音声を重視するマニア層には受け入れられないでしょう。

但し、上映システムが適切に管理されていない映画館の上映品質は家庭用の上映品質に劣る場合もありますので、一概に優劣を付けるのは難しそうです。

何れにせよ、現時点で映画館での上映を置き換えるには数多くの課題がありそうです。

上映作品がなくなる?

日本ではまだ深刻には受け止められていないかも知れませんが、世界的な上映機会の消失に伴い、新作大型作品の公開を半年程度延期する計画が伝えられています。

一部作品は家庭へのストリーミング配信での公開も予定されているようですが、この流れは劇場経営にとって何の助けにもならないのは明らかです。

さらに深刻な懸念として、現在製作中の作品やこれから製作が予定されている多くの作品で公開予定の見直しが迫られており、長期的に大型の娯楽作品など上映作品が不足することを懸念する声もあるようです。

業界慣習的に日本国内で海外作品が公開されるのは世界的にみて遅いのが通常で、多くの国々でほぼ同時に公開される作品でも日本で公開されるのは3ヶ月遅れというのが珍しくありません。(勿論一部の作品は除きます。)

現在公開されているハリウッド系の作品の多くは米国では昨年に公開されたもので、まだ日本での新作公開予定に影響が出ていないように見えます。

しかし、現在の状況が長引くと、欧米の新作映画が届かないという状況になりかねないことも頭の片隅に記憶しておくべきかも知れません。

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シネマテクノロジー、ゆく年くる年 (2019)

シネマ技術に関する1年前の予想を振り返りながら、2020年を予想してみたいと思います。

LED シネマディスプレイ

Samsung Onyx、Sony Crystal LED に続いて、LG からも DCI 認証を取得したシネマディスプレイが発表され、シネマ LED 市場の立ち上がりに新たな期待がもたらされました。

しかし、昨年指摘した様々な課題に対する業界内での進展は遅く、シネマ LED 市場の本格的な立ち上がりにはまだまだ月日を要する状況と言えます。

参入している各社とも社運を賭けた製品というよりも、業界に対してアピールを続けるための製品という印象もあり、今後の展開については年単位での長い目で様子を見ていく必要がありそうです。

ドルビーシネマの字幕品質基準

国内のドルビーシネマにおける字幕については随所で指摘してきましたが、その後改善されたのでしょうか?

12月に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で確認したところ、残念ながらまったく改善されていないようでした。

明るいシーンではあまり気になりませんが、暗いシーンではセリフが発せられる度に眩いばかりの字幕がドルビーシネマ本来の主映像のディテールを損ねることになっていました。

この作品、事前に字幕のないオリジナルバージョンでドルビーシネマの主映像のすばらしい品質を確認していましたが、日本で公開されている字幕版の品質は到底受け入れられるレベルのものではありませんでした。

今後の国内でのドルビーシネマの展開について不安を残すこの状況は残念な限りです。

Netflix の台頭

予想通り Netflix から多数の優れた作品、大作が公開されるようになった一年でした。

興味深いのは「ネット配信」と「劇場配給」に対する微妙なバランスです。

この辺りの立場の違いから昨年まで主要フェスティバルの受賞競争から排除されていましたが、劇場での興行を主としてきた従来の映画業界と新たな関係を築こうとしているのが興味深いところです。

まだまだ目が離せない年になりそうです。

SMPTE DCP に移行できるのか?

世界各地域で着々と進む SMPTE DCP への移行ですが、果たして日本では移行できるでしょうか?

一年前から状況は変わっておらず、まったく見通しが立たない状況です。

シネマ技術後進国となっている日本市場ですが、上映品質に対するこだわりだけは失わないよう心掛けたいところです。

以上、一年前と比べて期待した程の変化がなかったのが些か残念ではありますが、日本でもより良いシネマ体験ができるようになることを願いながら、新しい年を迎えたいと思います。

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LGのLEDディスプレイがDCI認証取得

混迷の色を深めるLEDシネマディスプレイ市場ですが、Samsung、Sonyに続いてLGが取得しました。

気になるシネマサーバーですが、LGが組んだのはDolby(旧Doremi)のIMS3000で、Dolbyとしても初めてLEDシネマディスプレイの戦列に加わることになったようです。

「ドルビーシネマのLEDディスプレイ版が登場するのか」という期待も出てくるかも知れませんが、Dolby Cinemaはプロジェクター、サーバーともにChristie製なので、直ぐにはそういう展開にはならないでしょう。

追加情報など入手でき次第、随時更新する予定です。

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シネマテクノロジー、ゆく年くる年 (2018)

2018年に起きたシネマ技術を取り巻く記憶に残る出来事を振り返りながら、2019年に予想される出来事を占ってみたいと思います。思い付くまま順不同で列挙してみましょう。

LED シネマディスプレイの登場

2017年から予告されていた Samsung の LED シネマディスプレイがついに今年正式な製品として登場しました。

大型の LED ディスプレイといえば、かねてから街頭ディスプレイで目にするような製品は出回っていましたが、劇場での映画上映の使用に耐えるような品質、機能、性能を備えたものはありませんでした。

Samsung Onyx Cinema LED は現時点で映画館で一般興行を行うために必要な品質、機能、性能を規定する DCI 認証 (CTP1.2) を取得し、まだ試験的ではあるものの、世界各地の映画館で一般興行を行いながら、上映機器として必要な実績を積み重ねてきました。

併せて、画面サイズの異なる二つのモデル(幅約10mと14m)を発売することで、対応可能な劇場サイズも広げました。

さらに昨今話題の音響方式 Immersive Audio の一方式である DTS-X にも対応したことで、来年は劇場上映システムとして、映像、音声を含めた総合的な市場評価が進むことになるでしょう。

一方で LED ディスプレイの本来の特性である HDR 性能を活かした映像制作とブランディングについては、業界内での働き掛けはみられるものの、更なる努力と工夫が必要な段階といえるでしょう。2019年中には、現状唯一の HDR シネマとして先行する Dolby Cinema に対抗できるような、具体的な展開がみられることを期待したいところです。

Samsung に遅れを取っている Sony も、今年後半に入って Samsung と同じ DCI 認証の取得を達成しましたが、まだ市場の動向を探っているのか、一般興行に使用される段階には至っていないようです。

Sony 製 LED シネマディスプレイ (Crystal LED) は Samsung Onyx と比べて画素間隔が狭いのが特徴で、4K 解像度でも幅約 5m で、より小さな画面に高精細の映像を表示したいという劇場に対象が絞られるので、同じ程度の大きさの劇場においては Samsung 製品との競合は避けられるでしょう。

Sony Crystal LED も製品性能としては現状の上映規格をはるかに上回るものを持っているのは事実なので、後はこの性能を活かした映像制作のプロセスを確立し、高品位上映方式のブランドとして、どのように業界内に浸透させられるかに掛かってくるでしょう。

ドルビーシネマ日本上陸

11月に待望の日本(九州)上陸を果たしてくれたドルビーシネマですが、2019年のゴールデンウィーク頃には当初の計画から遅れながらも首都圏(埼玉)への進出が予定されており、その後年内には都心でのオープンも実現する見通しです。

現時点で唯一世界規模で HDR 上映による映画興行が行われているドルビーシネマですが、 これまで随所で指摘してきたように、残念ながら字幕を必要とする日本での上映においては、本来の高品位な HDR の映像体験を楽しむことができるとはいえない状況です。

その要因として、1.ドルビーシネマ対応作品の製作者に日本での上映品質があまり注視されていない、2.日本国内でドルビーシネマの上映品質を管理する体制が整っていない、3.日本国内の観客にとって本来のドルビーシネマの品質がよく理解されていない、などが考えられます。

2019年、首都圏に登場する頃にはこれらの状況が改善されることを願うばかりです。

プレミアムスクリーンの乱立

今年に始まったことではありませんが、所謂プレミアムスクリーンが乱立される状況に、一映画ファンとして懸念を持ち続けています。

臨場感あふれる立体音響を楽しみたい、視界を覆い尽くす大画面の映像を観たい、より高品位な映像音声を楽しみたい、映像音声に合わせて振動や風や水飛沫も体験したい、後ろから蹴られる心配のない大きい座席に座りたい、映画を観ながらゆったり食事を楽しみたい、なんとなくプレミアムな優越感を味わいたい、などなど、プレミアム上映として追加料金のもとに提供される内容には様々なものがあります。

映画館でどのような体験を期待するのか、観客一人ひとりによって様々なので、一概にどの方式、どのブランドが良いか悪いかをランク付けする意図はありませんが、通常スクリーンと比べてどのような付加価値を提供してくれるのか、もう少しわかり易い表示、説明をお願いしたいと感じています。

個々の方式が実際の映画製作者の制作意図 (Artistic Intent) に沿ったものなのかという点についても気になるところでもあり、この辺り機会を改めて解説できればと思います。

Netflixの台頭

日本ではあまり大きく報じられることはありませんが、映画製作会社としての Netflix の躍進はここ数年めざましいものがあります。独自スタジオの設立や業界各社からの人材獲得なども凄まじい勢いで行われてきたようです。

これまで Netflix は自社のネット配信に特化した映画製作を行い、公式には劇場への映画配給に関心を示してきませんでしたが、そんな中でも昨年は中堅劇場チェーンの取得に興味を示すなど、業界内であらゆる可能性を模索しながら動き続けているようです。

ネット配信で競合する Amazon は既にネット配信と劇場配信の両方にまたがってビジネスを展開していますが、両者の力関係や旧来の映画会社との関係も目が離せない状況が続きそうです。

DCP 配信の電子化

デジタルシネマの時代に入り、上映作品の劇場への配送はフィルム缶からハードディスク (HDD) の形に変わりました。日本ではまだこの時代が続いていますが、世界では既に次の段階に進んでいる地域もあります。

最も進んでいるのは北米地域で、既に2010年頃から衛星データ配信のテストが始まり、現在主流は HDD 配送から衛星によるデータ配信に切り替わっており、HDD を配送するのは衛星受信設備のない小規模の劇場や非常時のみという運用になっています。

一方、一部の新興地域では、宅配事情よりも高速インターネットの普及の方が進んでいる地域もあり、そのような地域ではデジタルシネマ化と同時に劇場へのネット配信が導入されるケースも増えているようです。

日本では高速インターネットが先進国の中でも普及している筈ですが、同時に安全安価な宅配環境も整っているため、旧来の HDD 配送のまま変化が進まない様子です。

地球環境への負荷の側面から考えても、物理配送よりも電子配送の方が地球に優しい方法であることは疑う余地はありませんので、是非ともこの方向への動きが進むことを期待しています。

SMPTE DCP への移行

現在日本国内で流通している DCP は一部の特殊上映を除き、Interop DCP というフォーマットでパッケージされています。このフォーマットはデジタルシネマ黎明期の 2005年頃に業界有志によって作られ、3D 対応など機能拡張が行われながら今日まで使われています。

一方、2007年には標準規格である SMPTE DCP というフォーマットが規格化され、米国において直ちに市場導入の検討が始まりましたが、劇場機材の対応など現実とのギャップを埋めるのに年月を要し、実際に商業上映で導入されたのは 2015年のことでした。

その後、北米地域では着実に実績と改良を重ねながら導入作品を増やしており、2017年頃からは欧州一部地域でも導入が進んでいます。

日本市場に対しても導入の検討が行われましたが、日本独自の特殊事情(日本語字幕対応)により、現在のところ導入計画は未定となっています。

上映機材の新規導入や更新を検討する劇場様は、将来の SMPTE DCP への対応保証など、機材メーカーとの十分な確認をとっておくのが安心でしょう。

SMPTE DCP と Interop DCP にまつわる背景については、2019年に改めて記事をまとめたいと思います。

番外:アバター続編

2009年の『アバター』 “Avatar” 公開の後、毎年話題の陰に出ては消える『続編』ですが、残念ながら(?) 2019年も観れないようです。

主な原因は、制作技術にあるのではなく、現状の上映技術が製作者の要求に満たないというところにあるようです。

前作では初の本格的 3D 超大作として話題になりましたが、新技術にこだわりを持つジェームズ・キャメロンの要望により、続編では 3D に加えて『ある技術』を掛け合わせて上映したいということです。しかし残念ながら現状の上映機材ではその要望を満たすことができないので、その上映が可能になるまで公開しないという方針のようです。

現在のところ公開予定は2020年となっています。

幸いその要素技術はあるメーカーによって開発され、製品化は進んでいるようですが、実際に2020年にその機材を導入できる映画館は何スクリーンできるでしょうか?

大半の劇場では、特殊上映対応ではなく、通常の 2D または 3D 上映として上映されることになりそうです。

以上、年の瀬、思いつくままに記しましたが、2019年がより良い『シネマ』体験をできる年になることを願いながら、まとめとさせて頂きます。

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ソニーデジタルシネマディスプレイ DCI 認証取得

DCI 規定の直視型シネマディスプレイへの対応の見通しが立たない中、Samsung Onyx に続いて、Sony Digital Cinema Display がついに DCI 認証 (CTP1.2) を取得しました。

ソニーの LED シネマディスプレイに関するこれまでの展示では、DCP を使用した一般的な上映は行われず、展示用に作られた素材を使用したデモが行われてきましたが、今回初めて DCP を使用した通常の商業上映を行うことができる機材として認証されたことになります。

DCI の認証報告 (DCI認証機材: SONY: CLDC-11) によると、認証に使われた機材はこれまで汎用的な LED ディスプレイとして商品化されていた映像表示部 (ZRD-2) と表示制御部 (ZRCT-100) に加えて、一般的な DCP を上映するために必要なデータ処理装置 (Media Block / Screen Management Systemなど) が新たに組み合わされて、デジタルシネマの上映システムとして構成された模様です。

これにより理屈の上では Samsung Onyx と同様、実際の映画館に設置して商業上映に使用することができる上映機材として選択肢が増えたことになり、業界全体としては新たな希望として期待されるところです。

LED シネマディスプレイの DCI 認証と関連機材の今後の見通しについては、様々な角度から比較、分析すべきなので、これについては会員限定記事にて論じます。

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直視型上映機器の規格化に向けたDCIの覚書

LEDシネマディスプレイのような直視型上映機器の出現に伴い、これまでプロジェクターのような投射型上映機器を前提としてまとめられていた現行のDCIシステム規格(v1.2)を補完すべく、DCIシステム規格の改訂に向けた覚書が発行されました。

DCI Memorandum Regarding Direct View Displays

既に現行のDCIシステム規格のもとでDCI準拠の認定を受けているSamsung Onyxへの将来的な影響が気になるところですが、これに伴い直視型上映機器に関する業界内の動きが加速されるのは必至でしょう。

最終的に正式なDCIシステム規格として発行されるまで、まだしばらく時間が掛かりそうですが、要件として挙げられた項目は、対応を検討中のメーカー、スタジオ、ポスプロにとって重要なチェックリストとして見逃せません。

直視型上映機器の定義

まず最初に直視型上映機器(“Direct View Display”)とはどのように構成されるのかが定義されています。

  • スクリーン:直視型上映機器として機能するために必要なすべての機構を含むシステム全体を指します。
  • キャビネット:映像を表示する機能を構成するすべての機構を指し、通常複数のモジュールにより構成されます。
  • モジュール:キャビネットの映像表示部分を構成する要素で、通常劇場での修理交換などを行う際の最小単位となり、画素(発光要素)であるピクセルの配列により構成されます。
  • ピクセル:画素として必要な色域の光を発光できる最小の発光要素で、通常、赤、緑、青の3色のLEDにより構成されます。
システム要件草稿

19項目の検討項目がリストされており、まだ草稿ではあるものの、対応を検討する機器メーカーにとっては、製品設計に際して必要な施策を準備する上で、必要最小限の留意すべき項目のリストとなっています。

特に気になる項目としては、HDRへの対応、3Dへの対応、音響要件、セキュリティ要件などが挙げられます。特に音響、セキュリティに関しては従来の投射型上映機器とは基本的な前提が異なるため、機器メーカーは柔軟な発想を持って対応する必要がありそうです。

 

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LED シネマディスプレイ比較

昨年よりLEDシネマディスプレイの実用化が現実化してきましたが、商品化で先を行くSamsungと商品化には慎重なSony、それぞれのLEDディスプレイについて、両者に関する情報が公になってきましたので、現時点での知見をもとに比較したいと思います。

ここでLEDシネマディスプレイというのは従来のスクリーンに映像を投射するのではなく、スクリーン面上に無数に配列した微小半導体LEDを発光させることにより映像を作り出すものを指します。光源を直視することから直視型ディスプレイとも呼ばれます。

LEDディスプレイといえばこのところ家庭用のテレビにOLED(有機EL)が普及してきましたが、画素をLEDで発光させるというコンセプトは同じでも、発光素子の性質として発光波長など細かく異なる点があることは記憶しておくべきでしょう。

実体験

Samsung

昨年のCinemaConのタイミングでプレス発表が行われた後、なかなか実際の映像を体験する機会がなかったのですが、今回のCinemaConでは既にDCI規格の認証も取得し、満を持しての公開でした。
DCI規格を取得したのは4Kシステムですが、CinemaConのブースには2Kシステムの仮設のデモルームが作られ、いくつかのデモクリップを観せてもらいました。その一つが以下のものです。
YouTube: Samsung Onyx: Cinema LED Technology
これ以外に実際の商業作品のクリップも見ることができたのですが、CinemaConの翌週には、ロサンゼルス近郊のPacific Theatres Winnetkaに米国内で初めて劇場導入された4Kシステムで実際の映画上映を体験することができました。

CinemaCon 2018 Samsung Booth

Pacific Theatres Winnetka

Sony

「公の場でのデモ」としては2017年のCinemaConで初めて体験し、今年のCinemaConでも再び4Kのデモを体験しました。さらに今年は先に開催されたNAB Showで8Kのデモを体験しました。CinemaConでは劇場環境を想定した暗い部屋でのデモ、一方のNAB Showではオープンブースに設置されて周囲が明るい環境でのデモをそれぞれ体験しました。

Sony Crystal LED Display System at NAB Show 2018

Sony Crystal LED Display System at NAB Show 2018

Sony Crystal LED Display System at NAB Show 2018

今回の比較ではこれらの実体験とその後の業界関係者との情報交換を通して得た知見をもとに記していきたいと思います。

映像

Samsung

CinemaConでは仮設のデモルームで2Kのデモ映像を見ることができました。漆黒の黒と高輝度の映像は期待通りのものでしたが、デモルームという狭い空間で2Kの映像を見るとやはり解像度の限界が感じられ、このシステムの実力を評価するには物足りない環境でした。

Pacific Theatres Winnetka lobby

しかし、その翌週には実際の映画館で「アベンジャーズ:インフィニティウォー」全編を観ることができました。色も画も、プロジェクター投射による映像にありがちな「にじみ」や「なまり」はまったく感じられず、輝度もコントラストも忠実に「規格通り」の映像が再現されている印象で、まるでスタジオのスクリーニングルームで試写を観ているような質感があり、素直にこのシステムの基本性能の高さを感じることができました。

Pacific Theatres Winnetka Screen 20

一方、この劇場には4Kのシステムが設置されていたにも関わらず、配給されているDCPは通常の劇場で上映するものと同じ条件で作成された2KのDCPであったこともあり、折角の4Kの解像度を体感することができなかったのは残念でした。劇場側としてもまだ試験導入というスタンスのようで、敢えてLEDディスプレイであることも掲示ておらず、チケット料金も普通のスクリーンと同じ設定でした。

Sony

デモ映像を見た限り、画素が点発光である所為か、Cystal LEDという名前に相応しく、クッキリとした鮮やかな映像を表現するのに適しているように感じました。デモ用に作られた映像では明らかに通常の劇場上映の規格を超えるコントラストとダイナミックレンジが表現されており、従来の映画映像の規格を大きく変える可能性のあるデバイスとして期待を抱かせるものでした。

現時点で両者の商品化のフェーズは全く異なっているのと、用意された映像ソースが必ずしもそれぞれのデバイスの能力を最大限に発揮できるように作られたものとはいえないので、ここで両者の優劣を語るのは避けたいと思いますが、共通していえる課題として、これらの性能を活かすことができる映画作品は誰がどのように作ってくれるのか、現時点では両者ともまったくの未知数だといえます。このプロセスを上手く確立できなければ、デバイスの性能も充分に活かされず、それに見合った興行収入に結び付けるのも難しいでしょう。

発光素子、色、色域

個々の発光画素は自由に色を変えて発光するように見えますが、赤(R)緑(G)青(B)それぞれ単色のLED発光素子を組み合わせて構成されており、個々の出力を調整することで様々な色を発光します。

各発光素子の材料系など細かな情報は公開されていませんが、すべて半導体LEDを使用しているため、表示可能な色域は両社とも概ね同じであると推測されます。特に半導体LEDの弱点である緑の発色については共通の特徴として留意しておくべきです。すなわち、このところ次世代の映画フォーマットの基準として関心を集めている広色域化の要求を満たすのは困難なデバイスであることは記憶しておくべきでしょう。この点については業界関係者の間でも概ね認識されていますが、これ以外の魅力も多いデバイスでもあり、現時点でこれを問題視する声もあまり上がらないというのが現状のようです。

発光画素

発光素子として半導体LEDを使っていても、発光画素の形態には両者の間に大きな違いがあります。

Samsung

表面から見た個々の発光画素は正方形かそれに近い矩形の突起となっており、散光板(diffuser)のような材質の表面から均質に光が出力されるように見えます。RGBそれぞれの発光素子を目視することはできませんが、表面の散光板のお陰か、出力される光は綺麗に混ざり合って見えます。画面すれすれの角度から見ると若干色のズレが認められますが、そのような角度から映画を観ることはないので、実用上は問題ないでしょう。

個々の発光画素はつや消しの黒の素材の基板上に配列されているのと、発光素子の表面は散光板状の素材で作られているため、周囲からの光が反射することはなく、また乱反射も極めて低レベルに抑えられているのが分かります。通常の映画のスクリーンも外光の反射はありませんが、スクリーンに当たる光は効率的に乱反射するように作られているので、劇場内の無駄な光も散乱させ、黒のレベルを引き上げる要因になっています。その点において、SamsungのLEDディスプレイはこの問題を意識できないレベルまで低減できていると感じられます。

Sony

表面が透明なガラスで覆われた下に黒色の基板がありそこに発光画素が配列されていますが、電源オフの状態では一見何もないガラス板にしか見えません。じっくり目を凝らしてみると点状の素子が配列されているのが分かりますが、肉眼ではRGBそれぞれの発光素子を区別するのは不可能で、実際に発光させてみても「点」光源から画素毎の色の光が出力されており、RGBの三原色で色が作られていることを肉眼で確認することはできません。見る角度による色のズレも感じられません。

発光した時の色の鮮明さは極めて高く感じられますが、表面が透明なガラスで覆われているため、低反射コーティングが施されているとはいえ、見る状況、周囲の光の状況によっては反射光が気になることもあります。可能性は低そうですが、映画館のような暗い環境でも、条件次第で画面のLED光で照らされた客席からの照り返しが再度画面で反射して見えてしまうことはないのか確認したいところです。

コントラスト、ダイナミックレンジ

プロジェクション(投射)方式では、小さな画像素子から反射された光を、多くの光学素子を複雑に組み合わせた光学系を通して遠方のスクリーンに投射、結像させなければならないため、画像素子で作られた筈の高品質の画像がスクリーンに映し出されるまでに様々な形で「なまって」しまいます。

LED方式では画素一つ一つの出力を直接デジタル制御して、DCPの中に作り込まれた画像データがそのまま実際の画像として表示されるので、原理的には制作時に意図された微妙な濃淡や明暗を極限まで忠実に再現することが可能です。

解像度と画面サイズ

画面解像度は縦横に配列された発光画素の数で表されます。

プロジェクターからの投射映像のようにレンズでズームすることはできないので、作り込まれた画面の大きさとその表面に配置された発光画素の数で、解像度と表示可能な画面の大きさが固定値として決まってしまいます。この点が、LEDディスプレイを劇場で使用する際に、最大の制約となってしまうと言っても良いでしょう。

発光画素は精密な半導体素子により構成されているため、現在の製造技術では素子の間隔を自由に拡大縮小するのは難しく、製造メーカーとしてもいくつもの異なるサイズで製造するのは採算性を考えると非現実的だといえます。

LEDディスプレイの商品性として、現行のプロジェクター投射の劇場をすべて置き換えることを目指すのか、それともプレミアムスクリーンに限定した置き換えを目指すのか、さらにその場合、どのような大きさのスクリーンを対象にするのか、これらを冷静に分析して商品戦略を立てることが重要だといえます。

音響

現在普及している映画館の音響方式の代表的なものとして5.1または7.1チャンネルサランド方式がありますが、家庭用で一般的な(2チャンネル)ステレオ方式とは異なり、劇場内の周囲から包み込むように独立したチャンネルが配置されています。ステレオ方式との大きな違いのひとつに正面中央に配置されたチャンネルがあります。現在通常の映画館ではスクリーンの正面方向から音を出すために、布製のスクリーン全面に細かい穴が開けられており、スクリーンの背後に設置されたスピーカーからの音が客席に向かって出るようになっています。

LEDディスプレイを採用した場合、現状ディスプレイ前面から音を出力することができず、スクリーンと同様の方式で音を出すことができません。このことはLEDディスプレイの共通の課題として認識されています。

Samsung

LEDディスプレイ本体前面から音を出すことができないので、擬似的に前面から音が出ているように感じさせる仕組みを劇場音響メーカーと共同で開発しています。その仕組みを簡単に説明すると、ディスプレイ上端に客席に向けた反響板を設置し、ディスプレイとは別に設置された音源から出る音を反響させて、間接的に客席に響かせるようにしています。この方法は苦肉の策としては、ある程度の効果はあるようですが、劇場内の座席の位置や聴く人の感じ方次第では、さらなる改善が求められるレベルだといわざるを得ないでしょう。実際、私が着席したのは劇場内の中央部の座席でしたが、前面からの音声は明らかに上方から出ているのが感じられ、シーンによっては違和感を感じることもありました。一方、劇場後方の座席では恐らくこのような影響は軽減されると思われますが、通常プレミアム席が設置される中央部で制約が出てしまうのは残念なところです。

Sony

LEDディスプレイ前面から音を出すことができないのはSamsungと同じで、まだ実際の劇場への導入も未計画の現時点では明確な対策は打ち出されていません。ただ家庭用のOLEDテレビではディスプレイ前面から音を出す製品も出されているので、画面全面がガラスで覆われているという構造を活かして、このような技術との組み合わせによりこの問題を解決するような製品が出てくることを期待したいところです。