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デジタルシネマ適合性テストプラン CTP 1.4 / デジタルシネマシステム仕様 DCSS 1.4.3 公開

DCI から最新版のデジタルシネマ適合性テストプラン (CTP 1.4) とデジタルシネマシステム仕様 (DCSS 1.4.3) が公開されました。

DCSS は 1.4.2 からの小さな変更であるのに対し、CTP は 1.3.3 からの大きな変更が含まれています。

上映機器を設計するメーカーにとって重要であるのは勿論のこと、上映機器の導入、更新を検討する劇場にとっても、購入する機器がどの時点の規格に準拠しているのかを認識しておくことは重要です。

機器メーカーに対する直接的な影響の大きい CTP の変更点から概説します。

デジタルシネマ適合性テストプラン CTP 1.3.3 => 1.4 [オリジナルへのリンク]

主な変更点
  • HDR に対応するプロジェクターのテスト分類を追加
  • HDR/SDR それぞれに対応する直視型ディスプレイのテスト分類を追加
  • すべてのシネマサーバー(Media Block)に対して字幕描画のテストを適用
  • SDR プロジェクターの許容範囲を明記
  • 光度計から分光放射計に変更
  • 3Dイメージテストを追加

DCI の認証を受ける上映機器メーカーにとって、テスト内容の詳細が記述された本文書の変更は重大な影響を及ぼします。

発効日は120日後

今回の変更は基本設計に影響を及ぼし得る変更であるため、実際に発効するのは公開日(2023年8月4日)から120日後(2023年12月2日)となります。

今後認証テストの実施を計画している機器メーカーは、現行バージョーンと新バージョン、どちらに基づくテストを行うのか、認証テスト機関とのスケジュール確認が必要です。

HDR と SDR の区別

HDR 用機器の評価は、従来の SDR 用機器の評価で規定された基準となる各種数値が HDR 用の数値に置き換えられたようですが、評価項目自体に両者の間に目立った違いはなさそうです。

直視型ディスプレイの評価方法

直視型ディスプレイについては、映像が形作られる仕組みがプロジェクターとは物理的に本質的な違いがあるため、新しい評価方法が規定されたようです。

これまでにいくつもの直視型ディスプレイが認証テストに合格していますが、将来的にどの評価方法で認証を受けたかにより上映機器としての基準が異なる状況になることも予想されます。

光度計 (photometer) から分光放射計 (spectroradiometer) に変更

初期のデジタルシネマではフィルム上映と同じハロゲンランプだけが使用されており、波長分布の違いには殆ど注意が向けられませんでした。しかし、レーザープロジェクターの出現により状況は一変しました。

一見普通の人の目には同じ色に見えても、その色を構成する波長分布はランプ光源のプロジェクターとレーザー光源のプロジェクターでは全く異なり、レーザープロジェクターでも RGB レーザーと蛍光を併用するタイプでも全く異なります。

さらに、直視型ディスプレイでも使用される発光ダイオード等の種類により波長分布は異なります。

このように性質の全く異なる光源で作られた映像を光度計だけで評価することに対する懸念から、波長分布を測定できる分光放射計に変更されたようです。しかし、評価項目には波長分布の違いが影響するような内容は見受けられず、測定方法を変更することの価値には疑問が残るところでもあります。

3D映像の評価

2005年に初のデジタル3D作品が劇場公開されましたが、漸くCTPの評価項目に追加されました。

とはいえ、映像自体の評価項目はなく、2D映像の評価と同等の色、明るさ、階調、解像度などの基本項目に加えて、左右の映像が十分な精度で分離できることを確認するだけに留まっているようです。

残念なことにこれまでに繰り返し指摘してきたメガネと顔の間の散乱光による影響を評価する項目はありません。

サーバー側での字幕描画が必須に

初期のデジタルシネマでは字幕描画はプロジェクター側の補助ボードで行うというのが一般的で、サーバー側で字幕描画を行うという構成をとっていたのは国産の一社のみでした。主映像の描画を行うサーバー側で一括して字幕描画を行わないという構成は極めて不自然な設計で、実際現在に至るまで様々な弊害の原因にもなっています。

しかし、次第に各社ともサーバー側に字幕描画機能が実装されるようになり、サーバー側で主映像の描画から字幕描画まで行う構成が一般的になった結果、サーバー側での字幕描画が必須ということになったようです。

とはいえ、プロジェクター側で字幕描画を行う既存製品もまだまだ市場で使われ続けるため、弊害の種は市場に残り続けることになります。

デジタルシネマシステム仕様 DCSS 1.4.2 => 1.4.3 [オリジナルへのリンク]

主な変更点
  • 48kHz音声のデータサイズを規定
  • LE(リンク暗号化)の規定を削除
  • 湾曲する直視型ディスプレイを許容
  • 電子透かしの個体特定のためのビット数を19bitに加えて20bitも許容
  • コンテンツのセキュリティとシステムの信頼性に関する規定の微修正

『デジタルシネマシステム』を論理的に定義付ける技術要件がまとめられた本文書に加えて、HDR に対応する機器に関する追加文書と直視型ディスプレイに関する追加文書は引き続き別文書として提供されており、必要に応じて参照する必要があります。

HDR に対応する機器に関する追加文書
DCI High Dynamic Range D-Cinema Addendum 1.1
直視型ディスプレイに関する追加文書
DCI Direct View Display D-Cinema Addendum 1.1

これらはいずれも 2023年3月1日に承認された改訂版で、今回は変更されていません。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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