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CinemaCon 2023 (4/24-27)

4月24〜27日、米国ラスベガスでシネマ業界最大の恒例イベントである CinemaCon 2023 が開催されました。

昨年に続き本会合の状況を総括します。昨年の様子 CinemaCon 2022 (4/25-28) もご参考ください。

コロナ禍の影響

昨年は三年ぶりの通常開催とはいえワクチン接種証明の提示義務など一定の規制がありましたが、今年はコロナ禍による行動規制が完全撤廃されての開催となりました。

会場随所には消毒液が設置されていたものの、マスクの着用者もほとんど見られませんでした。

会場の賑わい

昨年同様、あくまでも筆者自身が現地で得た主観と業界各所の知人の参加状況に基づく推測ですが、コロナ禍前の例年と比べて来場者数は8〜9割程度に戻ったと感じられました。昨年は殆ど見られなかった米国外からの来場者数も例年の7〜8割には戻っていたという印象でした。

日本からの来場者も、コロナ禍前の7〜8割に戻ったようで、一般的なビジネス渡航客数の戻り具合と同程度という感じでしょうか。やはり、日本再入国前の検査義務が撤廃されたことが大きく影響したのかも知れません。

主催者米国劇場主協会(NATO)からのメッセージ

コロナ禍により閉館や身売りを余儀なくされた映画館も多い中、この場に集まることのできた映画館関係者たちに対して感謝と激励のメッセージが伝えられました。

映画館の価値の再確認

昨年はネット配信に先行する劇場公開の重要性が再確認されました。

そしてこの1年間、多くの新作公開においてより確かな事実として追確認されたようです。

ネット配信を前提に作られたある作品を、劇場試写会での好反応を受けて劇場公開に切り替えた結果、想定を大きく上回る大ヒットとなった例も挙げられました。

ある作品がネット配信で成功するには劇場先行公開での成功が鍵を握ること、そして劇場公開で成功しなかった作品はネット配信でも成功しないということが、この1年間のデータからも裏付けられたようです。

映画会社からのメッセージ

映画会社各社からはコロナ禍を乗り越えてこの場に集まることのできた映画館に対して、昨年以上の力強いメッセージと共に新作の紹介や本編の上映が行われました。

今年もハリウッド5大メジャー(Disney、Paramount、Sony、Universal、Warner)に加えて、Lionsgate、Focus から、数多くのハリウッドセレブを招いた新作紹介があり、各社からの映画館に対するメッセージはいずれも昨年にも増して力強いものばかりでした。

今年は Disney と Warner が共に創立100周年ということで、特に力のこもったプレゼンテーションが行われました。

一方、コロナ禍前には参加していた Amazon は今年も参加が見送られ、ネット配信との棲み分けの先行きに不安を感じさせる結果となりました。

劇場上映機材会社の展示

映画館の各種上映設備の機材メーカー、販売会社が各社の新製品、新技術を展示、紹介しました。

コロナ禍前のほぼ半減という印象だった昨年よりは少し増えたようでしたが、出展社数と規模を合わせた印象としてコロナ禍前の6〜7割に留まるものでした。

目新しい新技術よりもエコや持続性に重きを置く展示が多かった印象です。

LED シネマ(直視型シネマディスプレイ)は?

期待も関心も下火になってしまった LED シネマについては、先行各社の展示はなく、後発メーカー数社が小さい規模の展示を行なっていたのみでした。

その大きな要因として、LEDシネマとHDRシネマの規格は DCI から提示されたものの、最終的な認証試験の規格も定まらず、新規格に準ずる新作制作の噂もない状況で、新たな規格の高額な商品を積極的に製品化することもできないという背景があるようです。

まだ当分の間はこのような状況が続きそうな印象を受けました。

物品販売会社の展示

映画館で販売される飲食物の販売業者、映画上映以外の各種劇場設備(シート、建築部材、照明機器など)の販売業者が各社の製品の展示、紹介を行いました。

昨年既にコロナ禍前の8割程度には回復していた印象でしたが、今年は若干少なくなったような印象を受けました。

それでも日本では販売されていない菓子、スナック類が多数展示され、あれこれ試食したりサンプルの持ち帰りができるのは毎度のお楽しみです。

日本からの参加者の目線は何処に?

日本からの参加者もかなり回復し、改めて米国市場の状況を体感できる機会となった筈です。

機材導入を計画する劇場にとっては各社の機材が世界市場でどのような展示説明が行われているのかを実際に見聞きする機会であると言えるでしょう。

また新作発表の上映会では多くの映像がドルビーシネマの品質で上映されました。

ハリウッド作品の上映が本場ではどのような品質で行われているのかを体感する機会でもあります。

特に、字幕のない映像がどのような品質で上映されているのか、それに対して日本国内の上映品質が明るい日本語字幕によりどれだけ損なわれているのか、映画ファンであれば一目瞭然の事実に気付く筈です。

それを改善するためには何ができるのか、日本の映画ファンのために具体的な施策に繋げてくれることを期待します。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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