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CinemaCon 2024 (4/8-11)

シネマ業界最大の恒例イベント CinemaCon 2024 が米国ラスベガスで開催されました。 昨年(CinemaCon 2023)の報告に続き、本会合の状況を総括します。

シネマ業界最大の恒例イベント CinemaCon 2024 が米国ラスベガスで開催されました。 昨年(CinemaCon 2023)の報告に続き、本会合の状況を総括します。

コロナ禍前の活況か

概ねコロナ禍前に近い賑わいが感じられた昨年から、今年は出展内容と来場者数ともに完全にコロナ禍前の活況を取り戻したような印象を受けました。

北米以外の地域からの来場者数も明らかに増加し、特に今年は円安が進む状況にありながらも、日本からの来場者数の回復が顕著であったように感じられました。

CinemaCon サポート企業と関連団体

主催と協賛

CinemaCon は NATO (全米劇場主協会) 主催のもと、

  • ICTA (国際シネマテクノロジー協会):
    • 映画館で使用される機器の技術開発、製造、運用に携わる企業を中心とし、映画産業における技術の進歩を促進する団体
  • NAC (全米コンセッション協会):
    • 劇場運営に関わる飲食、売店、その他関連商品、サービスを提供する企業を中心に構成される団体

の協賛で開催されています。

スポンサー企業

スポンサー企業には業界ではお馴染みの企業が名前を連ねますが、開催年によって新規参入から事業撤退まで微妙に入れ替わりがあり、各企業の力の入れ具合、勢いの変化が感じられるのも面白いところです。

スタジオパートナー

上映作品の提供や監督、俳優などを呼び入れて新作映画の紹介をしてくれるのがスタジオパートナーですが、こちらも映画館での興行(収入)に対する期待の大きさを感じさせます。

常連の大手スタジオ以外の入れ替わりがあるのも興味深いところです。コロナ禍前には常連として定着しつつあった Amazon を見掛けなくなったのは残念です。

スポンサー企業
スタジオパートナー

主催者 NATO (全米劇場主協会) からのメッセージ

昨年経営陣が刷新された NATO ですが、基本的な立ち位置に変化は感じられず、ネット配信とは距離を置きながら、劇場での先行公開による興行収入の重要性が再確認されました。

MPA (米国映画協会 =旧MPAA) からのメッセージ

デジタル海賊版への懸念

米国で流通する映画作品のレーティングや著作権保護のための活動で知られる同団体の代表からは、劇場興行収入がコロナ禍から順調に回復してきた現状を歓迎する一方で、特にデジタル海賊行為に関する取り組みの重要性が付け加えられました。

背景:今日映画館から流出する海賊版は盗撮行為によるもので、高品質のデジタルコピーが流出する事態には未だ至っていません。しかし、一旦ネットストリーミング等による販売が始まるや否や、高品質のデジタル海賊版が出回るという問題が常態化しており、その後の興行収入に重大な影響を与えていると考えられています。

MPA としてこの状況を深刻に捉えており、海賊版撲滅に向けた取り組みの重要性が訴えられました。

※MPA には2019年(当時MPAA)にネットストリーミング会社では初めて Netflix が加盟しています。

上映機器各社の取り組み

DCI 新規格対応は?

DCI の新規格(HDR 上映規格、直視型シネマディスプレイ規格)に基づく認証試験が公開されました。

各社の取り組みが気になるところでしたが、微妙な温度差が感じられました。

昨年から微修正を重ねながら概ね落ち着きつつあるとはいえ、対応作品の制作から配給に至るワークフローも定まらない中、制作サイドからの積極的な対応予定も聞こない状況で、まだしばらく時間が掛かりそうな印象です。

Christie

プライベートブースで HDR 対応のデモを紹介。
同社は既に Dolby Cinema 用や Cinity 用の高輝度高コントラストの製品を出しているが、DCI 準拠のスペックでの HDR 対応を意識した商品化を目指している模様。

Barco

HDR by Barco と銘打ってプライベートブースで HDR 対応のデモを紹介。
こちらも DCI 準拠の HDR 対応を意識したものと見受けられる。
併せて、SDR/HDR に両対応するためのコンテンツ制作のツールも紹介。

Sharp/NEC

小規模劇場を意識した小型機の紹介に留まり、HDR 対応とは距離を置いている模様。今後ブランド名も Sharp に統一してゆく見通しとのこと。

Dolby Cinema

Caesars Palace の大劇場 The Colosseum Theater は CinemaCon 会期中 Dolby Cinema 仕様に改装されてスタジオ各社の作品紹介等に使用されるのが恒例となっています。

今回改めてその事実をアピールするために Dolby Cinema 自体のデモが行われたようです。

普段は収容人数4000人超のコンサートホールとして使用されている同劇場が確かに Dolby Cinema 仕様に改装されていることを感じることができました。

今回敢えてこのようなデモを行った背景には、このような大劇場にも導入可能であることを見せることで、高輝度高コントラスト上映方式としての優位性をアピールしたいという思惑があったのかも知れません。

スペック上は DCI 新規格が規定する HDR には及ばないものの、既に世界各地に何百もの劇場に日常的に対応作品を供給できる体制が確立されているという自信を感じさせます。

裏を返せば、DCI 準拠の新規格が普及するかどうかは、対応作品を制作するためのワークフローを如何に確立し、普及させられるかどうかに掛かっているとも考えられるでしょう。

LED シネマ(直視型シネマディスプレイ)

中国系の数社から昨年と同程度の一般展示があったのみ。DCI 新規格への対応(認証取得)に向けた動きは認められなかった。

CinemaCon 2025

次回 CinemaCon は 2025年3月31日〜4月3日 という日程で開催されるという通知がありました。これから一年間の進展を注視しながら、次回を楽しみにしたいと思います。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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