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映画館の抗菌対応

緊急事態宣言が全国的に解除され、首都圏の映画館でも営業再開に向けた準備に余念がないことかと思いますが、観客として気になるのは上映作品のラインナップもさることながら、映画館の衛生対応の状況かと思います。そんな中で、映画館の抗菌処理を積極的に準備を進めてくれている動きもありますのでご紹介します。

参考情報

これまで映画館の営業再開に向けた施策としてお知らせしてきた中では大きく触れられていなかったのが抗菌処理です。

映画館を『キノシールド』で丸ごと抗菌化

映画館の施工からグループ会社で執り行うキノシネマならではの取り組みですが、キャッチーなネーミングで映画館の抗菌化をアピールしているようです。

家庭用日用品でも抗菌加工という表示を目にすることも多いですが、不特定多数が接触する可能性の高い公共施設の各所に対しても処理を施しておくことで、不意な感染の機会を減らすことが期待されます。

処理の対象は館内全て 〜座席(座面・ひじ掛け)、劇場扉、トイレ、床、手すり、カウンター等〜 ということですが、各種日用品でも目にすることの多い酸化チタン(光触媒 TiO2)、銀イオン(Ag+)、可視光ゾル(Pt)などを組み合わて処理を行っているようです。

除菌消毒にはやはり日用品でも目にする塩素系薬剤及びアルコール剤、除菌洗浄剤等を使用し、除菌剤の空間噴霧、高頻度接触箇所の拭き上げ作業、除菌消毒作業を組み合わせることで処理効果を高めているようです。

キノシネマ以外でも同様の対策を講じている映画館も多い筈ですが、来場客に対して少しでも安心感を与えるためにも積極的にホームページ上で情報提供する努力には好感が持てますね。

衛生観念が不可欠

一方、これらの抗菌除菌対策は完全万能ではありません。感染を防ぐ上で最も重要なのは施設を使用する一人ひとりの人間の衛生観念とそれに基づく節度ある行動です。

これから待ちに待った上映再開が広まることが期待されますが、映画館から感染を広めてしまうことのないように心掛けながらシネマ鑑賞を楽しみたいと思います。

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映画館営業再開への準備

米国では感染再拡大が懸念されながらも、映画館など各種娯楽施設の営業再開に向けた動きが活発化しています。そんな中で劇場オーナーにも具体的な対策の準備を進めているところもありますのでご紹介します。

参考情報

EVO Entertainment Group

米国テキサス州オースティンを拠点に5年前に設立したばかりの若い会社ですが、郊外7ヶ所の施設で合計57スクリーンの映画館を運営するだけでなく、ボーリング場、レストラン、ライブ音楽など、多角的な家族向けの娯楽を提供しているのが特徴です。

テキサス州では4月30日より外出規制が緩和されるのに伴い、EVOの各施設も5月4日より段階的に営業を再開する準備を進めています。

営業再開に際しては、訪れる人々に対していかに安心感を与えられるかという点を重要視し、ホームページには極めて具体的でわかりやすい実行計画を準備していることが説明されています。

この施策は他の劇場チェーンでも参考にしてもらえるように公開されています。

従業員に対するルールの徹底

先ず営業再開の大前提として従業員に対して以下のことを徹底させます。

  • 一時間毎の手洗いを徹底
  • 頻繁に触れるところを30分毎に消毒
  • 疾病管理局等が推奨する十分な距離をあけて作業をする習慣
  • 何らかの症状が出た場合は出勤しないこと(就業補償付き)
  • 疾病管理局等が推奨する防護具の使用、着用の徹底

段階的な制限の緩和

実際の制限緩和に際しては三つの段階に分けた施策が考えられています。

第一段階
  • 従業員だけでなく来場客の体温も測定し、38℃以上の来場者の入館を拒否
  • 従業員と来場客とも過去二週間に疑わしい症状が無かったことを口頭で確認
  • マスクの着用(持たない来場客には無料配布)、従業員はゴム手袋の着用
  • チケット販売はオンライン(サービス料免除)推奨、劇場では無人キオスクのみ、現金不可
  • 座席制限:
    • 定員の25%に制限
    • 1列おきに座席を指定
    • グループ間は2席以上空ける
    • 1グループは5人まで
  • 売店、飲食にも各種制限、現金は全面不可
第二段階
  • 従業員の体温測定
  • 従業員の過去二週間の無症状の確認
  • 従業員のマスク着用、希望する来場客には無料配布、従業員のゴム手袋着用
  • チケット販売はオンライン(サービス料免除)推奨、窓口はひとつおき、現金不可、床には間隔を示すサイン
  • 座席制限:
    • 定員の50%に制限
    • 前後が重ならないように指定
    • グループ間は1席以上空ける
    • 1グループは8人まで
  • 売店、飲食にも各種制限、現金は全面不可
第三段階
  • 従業員の過去二週間の無症状の確認
  • 従業員のゴム手袋の着用
  • チケット販売:現金可、床には間隔を示すサイン
  • 座席制限:
    • 定員の75%に制限
    • グループ間は1席空ける
    • 1グループは10人まで
  • 売店、飲食の制限は概ね解除、現金可

技術的に運用できるのか?

更に詳細も規定されていますが、細かいルールを実際に運用できるのかという疑問もあるでしょう。

例えばチケット販売の細かいルールですが、EVOが導入しているチケットシステム(Vista)には上記のルールをシステムに実装済みで、それぞれのモードを切り替えるだけで対応できるようです。

観客のいないなかったこの期間に十分なテストが可能だったのかも知れません。

営業再開の際に感染再燃の温床にならないようにしっかりと準備をしておきたいものです。

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映画館休業中の今できること、今だからこそやっておきたいこと

映画館の休業を余儀なくされる中、家庭でのネットストリーミングに流れる動きもあるようですが、今だからこそ映画館の価値を高めるためにできること、やっておきたいことを考えてみます。

ネットストリーミングで良いの?

ここ数年、ネットストリーミングによる新作公開も増え、映画館を不要視するような声を聞くことが増えてきました。

確かに家庭で好きな時に気軽に観たい作品を楽しめるというというという点では映画館に勝りますが、上映品質の点では映画館には遠く及ばないことは記憶しておくべきでしょう。

残念ながら、今日のネットストリーミングのコンテンツ制作基準、家庭での上映(再生)環境では映画館向けに作られたコンテンツと映画館での上映環境には敵わないのです。

但しこう言えるのも、映画館の上映システムが最適な状態に管理維持されている場合と比較した場合です。

上映システムの調整は万全ですか?

言い換えると、適切な状態にメンテナンスされていない上映システムでは必ずしもネットストリーミングよりも高品質な上映を楽しむことができないことになります。

上映システムを導入した時にはしっかり調整されていたとしても、長期に渡って使用するにつれて、システム本来の品質で上映できなくなってしまいます。

フィルム映写機と比べて可動部分も少なくなり、IT機器の仲間のように思われがちなデジタルシネマシステムですが、経年変化は必ず起きます。

特に光学系の変化と映像の劣化は顕著で、輝度の低下、輝度ムラ、色ムラ、フォーカスのズレ、二連プロジェクターのズレ、RGBパネルのズレ、スクリーンの汚れなど、これらが組み合わさるとストリーミングの映像にも簡単に負けてしまいます。

これらは一見システムとして正常に動作しているように見えても、映像そのものの品質に顕著な劣化を招くので、これを放置して上映を続けるのは映画館としての風評にも影響を及ぼしかねません。

この機会に上映システムの再調整を!

日々の上映が立て込む日常においては、中々システムの点検調整に時間を割くことは難しいものですが、お客様がいない今こそじっくり時間をかけて調整し、システム本来の性能を取り戻した上で、自信を持ってネットストリーミングから観客を取り戻せるように備えておきたいものです。

調整内容によってはメーカーのサービスを呼ばなければ手が出せないこともありますが、先ず自分一人でもできることとして、システムの状態の確認はしておきたいものです。

取り掛かりとしてシステム内蔵の各種テストパターンで基本的なチェックをすることができますが、より複雑なテストクリップ DCP を入手して入念に異常、違和感がないかを調べます。

テストクリップの入手や評価手順に付いては Cinema Test Tools が役に立ちます。(機械翻訳による日本語ページも一応はあります。)

新技術の導入

映画館に新しい技術を導入する際には通常の上映の妨げにならないように最終上映終了後の深夜から翌朝初回上映開始までの作業が勝負です。

しかし、全館休館の今なら日中の時間を使って存分にテストできるでしょう。今このタイミングを逃す手はありません。

視聴覚に障害のある方への上映補助システムなど、日本の劇場では殆ど導入されていないシステムの導入を試みるなど、できることは色々ありそうです。

SMPTE DCP への準備確認

新技術への対応として誰もが避けて通れないのがデジタルシネマパッケージの標準フォーマットである SMPTE DCP への準備です。

現在日本の映画館では没入型音響システムを採用した一部の上映を除き、デジタルシネマの初期から使われている暫定フォーマット Interop DCP が使用され続けています。

北米では10年ほど前から SMPTE DCP の市場導入テストが始まり、5年ほど前には9割程度の映画館が SMPTE DCP への対応を完了しました。

世界的にも SMPTE DCP への移行が着実に進む中、日本では未だ本格的な移行に向けた筋道が見えない状況にあります。

DCI 準拠の上映システムであれば基本的には SMPTE DCP への対応は可能な筈ですが、システム上の設定変更が必要な場合もあり、最悪の場合、機材の変更が必要になることもあり得るため、可能な限り早期の対応確認をしておきたいところです。

一言で SMPTE DCP と言っても様々な設定やオプションなど自由度が高いため、すべての規格に対応できている上映システムはありません。

市場に導入されているのは特定のプロファイルに則ったパッケージですが、これは DCI の基準と同等ではないため、DCI 準拠の上映システムというだけでは安心することはできないのです。

市場導入されている SMPTE DCP のプロファイルは ISDCF において管理されており、https://www.isdcf.com/site/test-content/ からテストクリップを入手することができます。

こちらは英語版しかありませんが、この休館中の時間を将来への備えとして有効活用して頂ければ幸いです。

ご質問などありましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。

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新型コロナウイルスによる影響、AMC 破産手続きの可能性

世界的に明るい話題が出てこない映画業界ですが、米国最大手の映画館チェーン AMC Theatres が破産手続きに向けた検討に入った模様です。

関連報道:

AMC Theatres (American Multi-Cinema) といえば 2016 年に Carmike Cinemas を取得した結果、Regal Cinemas を抜いて全米最大の映画館チェーンとなったのが記憶に新しいところです。

北米ではほぼ独占的に Dolby Cinema を展開するなど、新技術の導入においても積極的でしたが、新型コロナウイルスの影響で全米 630 の劇場の休館を余儀なくされています。

経営陣としては6月中には再開に漕ぎ着けたいと意欲を示しているようですが、殆どの劇場が再開の見通しの立たないショッピングモールにある上に、大きな興行収入を見込むことのできる大型作品が軒並み公開延期となっており、未だ経営の先行きが読めない中で、今後の対応についての助言を得るために破産手続きの専門家を雇い入れた模様です。

まだ確定的ではありませんが、映画館チェーンとして何らかの再編成は避けられないだろうと見られています。

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新型コロナウイルスによる影響、長期休業後のシステム再稼働への備え

漸く首都圏他、大都市圏を対象とした緊急事態宣言が発効し、対象地域の映画館はほぼ全館長期休業を余儀なくされることになりそうです。

シネマ業界に与える影響は各国と同様に甚大なものになることが懸念されますが、業界団体が先導する欧米諸国とは異なり、国内のシネマ業界に対する具体的な救済措置が見えないままでの全面休業になりそうなのは心苦しい限りです。

経営面での懸念もさることながら、前回触れた上映システムの再稼働に対する備えも真面目に取り組んでおく必要がありそうです。

通常の使用下では問題なく連携して動作していても、長期間電源から切断された状態から再起動する際には、設置時と同じような注意や作業を要することもあります。

デジタル家電の電源を入れるのとは訳が違うのです。

感染騒動が治り映画館を再オープンできることになっても、最悪の場合、上映システムが正常に動作しないという事態が懸念されます。

起きてしまうとかなり厄介なのはセキュリティーモジュールの電池切れで、この内蔵時計が初期化されてしまうと、顧客自身の手で正常動作に復帰させることはできなくなってしまいます。

新型コロナウイルスによる影響、続報」から抜粋

これまでに各地の業界コミュニティ、メーカー各社から公開されている注意事項へのリンクが ISDCF の関連ページにまとめられていますので、以下に転記しておきます。(残念ながらすべて英語での資料となります。)

業界コミュニティーがまとめたリンク集
メーカー各社から提供された資料

以上は各社から自発的に提供された情報ですが、これらに含まれていないメーカーに関しては個別に事前に問い合わせおく必要がありそうです。

特に中小の劇場様方が一日も早く無事再稼働されることを願ってやみません。

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新型コロナウイルスによる影響、続報

都内での経路不明の感染拡大に伴い、この週末は首都圏の多くの劇場で上映が休止されることになりそうです。一方、海外でも様々な動きが続いているようなので、順次取り上げたいと思います。

米国上院の高速対応

先週 NATO から提出された救済措置の要望に応えて、満額回答ではないかと思われる内容が米国上院の超党派の合意として発表されました。詳細は今後詰めるとしながらも、

  • 休館中の固定費支払いのために劇場や関連事業者に 4540億ドル(約50兆円)の融資を保証する。
  • 大多数の劇場所有者が該当することになる中小企業支援プログラムを拡張し、一部項目に関しては返済免除の融資を行う。
  • 給与税の繰り延べ、事業損失の繰り越しを認める条文追加、優良資産に関する条文修正。
  • 休業中の雇用継続や売り上げ喪失を配慮した税額控除。
  • 最大4ヶ月までの労働者の雇用保険の延長と拡大(支給額の増額、パートタイム従業員への適用も含む)。
  • 労働者に対する税額控除の拡大。

というかなり具体的な内容となっています。

たった1週間でここまでの回答が得られるのは、政治家からもシネマ業界が重要視されていることの証でしょうか。

長期休業後の上映システム再稼働

長期間上映システムを停止させた後の再稼働に関して、業界内では休館騒ぎが始まった当初から懸念が挙げられていました。

デジタルシネマの上映システムは多くの場合、様々なメーカーの機材が様々なインターフェースで接続された組込みコンピュータの複合体で構成されています。

通常の使用下では問題なく連携して動作していても、長期間電源から切断された状態から再起動する際には、設置時と同じような注意や作業を要することもあります。

デジタル家電の電源を入れるのとは訳が違うのです。

感染騒動が治り映画館を再オープンできることになっても、最悪の場合、上映システムが正常に動作しないという事態が懸念されます。

起きてしまうとかなり厄介なのはセキュリティーモジュールの電池切れで、この内蔵時計が初期化されてしまうと、顧客自身の手で正常動作に復帰させることはできなくなってしまいます。

このような状況に陥らなくても、少しでも問題を回避できるように、欧米市場のいくつかの業界団体(UNIC、ISDCF など)やメーカー各社からは注意書や手順書のようなものが提供され、中小の劇場でも最低限の対応ができるように配慮が進められています。

しかし、このような資料を公開していないメーカーもあり、さらに日本市場向けにはまとまった情報が公開されていないという状況です。

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新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの感染拡大により既に世界中の経済に影響が出ていますが、シネマ業界も例外ではありません。業界内での動きについて記しておきたいと思います。

世界各地で閉鎖される映画館

当初感染が確認された中国では早くからすべての映画館が閉鎖されましたが、ここに来て感染拡大に歯止めが掛かったことから、一部の劇場で営業が再開されてきたようです。

感染拡大が緩やかな日本では注意喚起や一部での入場制限は行われているものの、現在でも完全閉鎖されている劇場はないようですが、爆発的な感染拡大に対する警戒が叫ばれている中で、安心できる状況にはなさそうです。

感染拡大が治まらない欧米諸国の状況は深刻で、殆どの映画館が閉鎖されています。

米国では NATO(読み:“ネイトー”、全米劇場所有者協会)が米国議会と政府に対して、劇場経営と15万人の劇場従業員の生活を支援するための施策(固定費軽減のための融資保証、従業員に対する税制優遇、閉鎖に関わる費用の軽減、劇場再稼働時に損失回収するための税制優遇)を要求し、また NATO 自身も積立金100万ドルを職を失った劇場従業員のために支出するとのことです。

一方、欧州では UNIC(読み:“ユーニック”、欧州シネマ業界連合)が各国の政府に対して、欧州は『シネマ』誕生の地であり、その文化的な価値を守り続けるべきという信念のもと、このシネマ業界がこれまでに経験したことのない困難を乗り越えるために、今後数ヶ月に渡り可能な限りの支援を行うように要請しました。

ドライブインシアターの復権?

映画館のように閉鎖された空間に不特定多数が密集することで感染拡大のリスクが高くなるのであれば、特定少数毎に隔離された自動車内で映画鑑賞を楽しめるドライブインシアターなら安全だろうということで、一部のドライブインシアターを見直す動きもあるようです。

ただ、現在使用可能な設備は品質・スクリーン数ともに限られており、現行の映画館の収益を置き換えるには程遠いと言わざるを得ません。

新たに設備を作るのであれば、昨今注目を集めている LED シネマディスプレイを使うのが良いのでは?と冗談半分に言う人もいます。

確かにドライブインシアターなら音響はカーオーディオを使用することになるので、LED シネマディスプレイの課題である音響問題を回避することは可能ですが、屋外に恒久的に設置するとなると映像品質、耐久性など解決しなければならない別の課題が噴出しそうです。

ストリーミングサービスによる家庭での映画鑑賞?

より現実的な代替方法として語られているのが、Netflix や Amazon Prime Video などのストリーミングサービスやケーブルテレビ、衛星放送を利用した家庭での映画鑑賞です。

今回の感染騒動よりかなり前からストリーミングサービス専用の公開作品も数多く作られており、将来的には映画館は要らなくなるという極論を唱える人もいます。

ただ、家庭用のテレビ画面やホームシアターシステムで楽しむことができる映像と音声はスペック上は映画館向けのものと比べると多くの点で劣っているため、高品質の映像と音声を重視するマニア層には受け入れられないでしょう。

但し、上映システムが適切に管理されていない映画館の上映品質は家庭用の上映品質に劣る場合もありますので、一概に優劣を付けるのは難しそうです。

何れにせよ、現時点で映画館での上映を置き換えるには数多くの課題がありそうです。

上映作品がなくなる?

日本ではまだ深刻には受け止められていないかも知れませんが、世界的な上映機会の消失に伴い、新作大型作品の公開を半年程度延期する計画が伝えられています。

一部作品は家庭へのストリーミング配信での公開も予定されているようですが、この流れは劇場経営にとって何の助けにもならないのは明らかです。

さらに深刻な懸念として、現在製作中の作品やこれから製作が予定されている多くの作品で公開予定の見直しが迫られており、長期的に大型の娯楽作品など上映作品が不足することを懸念する声もあるようです。

業界慣習的に日本国内で海外作品が公開されるのは世界的にみて遅いのが通常で、多くの国々でほぼ同時に公開される作品でも日本で公開されるのは3ヶ月遅れというのが珍しくありません。(勿論一部の作品は除きます。)

現在公開されているハリウッド系の作品の多くは米国では昨年に公開されたもので、まだ日本での新作公開予定に影響が出ていないように見えます。

しかし、現在の状況が長引くと、欧米の新作映画が届かないという状況になりかねないことも頭の片隅に記憶しておくべきかも知れません。

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シネマテクノロジー、ゆく年くる年 (2019)

シネマ技術に関する1年前の予想を振り返りながら、2020年を予想してみたいと思います。

LED シネマディスプレイ

Samsung Onyx、Sony Crystal LED に続いて、LG からも DCI 認証を取得したシネマディスプレイが発表され、シネマ LED 市場の立ち上がりに新たな期待がもたらされました。

しかし、昨年指摘した様々な課題に対する業界内での進展は遅く、シネマ LED 市場の本格的な立ち上がりにはまだまだ月日を要する状況と言えます。

参入している各社とも社運を賭けた製品というよりも、業界に対してアピールを続けるための製品という印象もあり、今後の展開については年単位での長い目で様子を見ていく必要がありそうです。

ドルビーシネマの字幕品質基準

国内のドルビーシネマにおける字幕については随所で指摘してきましたが、その後改善されたのでしょうか?

12月に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で確認したところ、残念ながらまったく改善されていないようでした。

明るいシーンではあまり気になりませんが、暗いシーンではセリフが発せられる度に眩いばかりの字幕がドルビーシネマ本来の主映像のディテールを損ねることになっていました。

この作品、事前に字幕のないオリジナルバージョンでドルビーシネマの主映像のすばらしい品質を確認していましたが、日本で公開されている字幕版の品質は到底受け入れられるレベルのものではありませんでした。

今後の国内でのドルビーシネマの展開について不安を残すこの状況は残念な限りです。

Netflix の台頭

予想通り Netflix から多数の優れた作品、大作が公開されるようになった一年でした。

興味深いのは「ネット配信」と「劇場配給」に対する微妙なバランスです。

この辺りの立場の違いから昨年まで主要フェスティバルの受賞競争から排除されていましたが、劇場での興行を主としてきた従来の映画業界と新たな関係を築こうとしているのが興味深いところです。

まだまだ目が離せない年になりそうです。

SMPTE DCP に移行できるのか?

世界各地域で着々と進む SMPTE DCP への移行ですが、果たして日本では移行できるでしょうか?

一年前から状況は変わっておらず、まったく見通しが立たない状況です。

シネマ技術後進国となっている日本市場ですが、上映品質に対するこだわりだけは失わないよう心掛けたいところです。

以上、一年前と比べて期待した程の変化がなかったのが些か残念ではありますが、日本でもより良いシネマ体験ができるようになることを願いながら、新しい年を迎えたいと思います。

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LGのLEDディスプレイがDCI認証取得

混迷の色を深めるLEDシネマディスプレイ市場ですが、Samsung、Sonyに続いてLGが取得しました。

気になるシネマサーバーですが、LGが組んだのはDolby(旧Doremi)のIMS3000で、Dolbyとしても初めてLEDシネマディスプレイの戦列に加わることになったようです。

「ドルビーシネマのLEDディスプレイ版が登場するのか」という期待も出てくるかも知れませんが、Dolby Cinemaはプロジェクター、サーバーともにChristie製なので、直ぐにはそういう展開にはならないでしょう。

追加情報など入手でき次第、随時更新する予定です。

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ドルビーシネマの上映品質

全米各地のドルビーシネマの鑑賞体験を重ねる中、ドルビーシネマの上映品質について懸念していたことが顕在化してきました。

日本では国内4スクリーン目となるドルビーシネマが都内にオープンしましたが、今後さらに増える中で注意して見ておきたい点を列挙してみます。

※国内のドルビーシネマの名誉のために注記しておきますが、私が体験した3つのドルビーシネマでは以下に列挙する問題はどれも確認されませんでした。これまでのところは。今後もしっかりとメンテナンスをお願いしたいところです。

ドルビーシネマの上映品質

ドルビーシネマを体験される方は本編上映開始前に流れるドルビーシネマのプロモーション映像に圧倒されることでしょう。

言うまでもなくあの映像はドルビーシネマの能力を最大限にアピールするように構成されたものなので、実際の映画の中でどのように活かされているかは少し冷静な目でみる必要があるでしょう。

それ以上に注意すべきなのは、上映機材毎の品質管理です。

最高の状態に調整された上映機材でのみ、ドルビーシネマ本来の品質の映像を体験できる訳ですが、上映設備が増加する中、管理が行き届かない設備も散見されるようになってきたようです。

散見される品質課題

レーザースペックル

レーザー光の干渉性により発生する画像のノイズで、すべてのレーザープロジェクター、特にRGBプロジェクターにおいて対策が必要となる問題です。

レーザー光がスクリーン上でフォーカスした際、スクリーン表面のミクロな凹凸に対する干渉パターンを描き出してしまい、本来の映像にはないギラギラした感触の画像ノイズとして現れるのが特徴です。

このノイズは見る場所によって、現れる場所やパターンも異なります。頭をグラリと動かしただけでも変わるので、結果ギラギラという感触で見えることになります。

基本的にDolby Cinemaではレーザースペックルが現れないように工夫されていますが、そうではない劇場も散見されます。

2台のプロジェクターの画合わせ

光軸の異なる2台のプロジェクターから同じスクリーン面に同じ映像を投影すると、光学的な調整だけで画素単位で完全一致させるのは不可能なので、電気的な補正と合わせて画として完全一致させます。

光学的な調整だけでもかなりの合わせ込みが可能な場合もあるのですが、劇場によっては、明らかに初歩的な調整で間違いを侵したまま、放置、運用されている劇場もあるようです。

このようなDolby Cinemaで高画質4K作品を観ても、4K映像がダブってズレた映像を見ることになってしまいます。

このような状態、うっかりしていると見逃してしまいがちですが、ラストクレジットのようなコントラストがハッキリした映像を見ると、容易に確認できます。

RGBのレジずれ

信じられないことにDolby Cinemaでもズレたまま使われている機材があるんです。

通常シネマ用プロジェクターではRGBそれぞれの色成分の映像をプロジェクター内で重ね合わせた上でスクリーンに投影します。

通常これらの映像は厳密に重なるように調整(registration)されていなければなりませんが、Dolby Cinemaでもズレたまま使われている機材が存在します。

RGBレジずれもうっかりしていると気が付きません。特に天然色の自然映像ではズレが映像自体に混じり込んで殆ど気付くことはないでしょう。

しかし、この場合もラストクレジットのような輪郭のハッキリした白黒映像を見ると一目瞭然です。

すべての文字の同じ端面(上、下、左、または右)に同じ色のにじみが現れていたら、これがレジずれです。

現れる色と方向は、RGBどの映像がどの方向にずれているかによってそれぞれ異なります。

では、白黒の自然映像ではどうなるのでしょう?

なだらかな白黒のグラデーションは、ほのかに色付いたカラーグラデーションで色付けされます。

高精細の白黒の造形には、ほのかな彩りの縁取りが現れます。

これらは一見アーティスティックな演出にもみえてしまうこともあるのが曲者です。

こんな話があります。

ドルビーシネマで『ローマ』を観ると色が見えるという都市伝説

“アルフォンソ・キュアロン監督の白黒作品『ローマ』をドルビーシネマで観ると、圧倒的な高画質と高コントラストのお陰で色を感じることがある。”

さてどうでしょう?

色の感じ方は主観によるところも確かにあるので、絶対的な否定はしませんが、この方は“レジずれ”ドルビーシネマで観てしまったのではないかという疑いを拭えません。

国内のドルビーシネマ導入計画も目白押しですが、日本ではこのような懸念が現実のものにならないようにしっかりとした上映機材の維持管理を期待しています。

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『ジェミニマン』のハイフレームレート上映

アン・リー監督の新作『ジェミニマン』が公開されましたが、注目の『ハイフレームレート上映』に付いてはあまり関心が寄せられていないようです。通常の上映と比べて何が違うのか少し解説してみたいと思います。

映画のフレームレート

現在、通常の映画はフィルム時代からの慣習に従い、1秒間に24フレームという割合で制作、上映されています。

今時テレビでも毎秒60フレームで映るのに何でそんなに遅いのかと感じるかも知れません。

その一方で、フィルム映画の資産をそのままデジタル上映に変換、流用しやすいというメリットもあります。

それよりも、デジタルシネマの規格の策定時に多くの映画制作者がこだわったのが、1/24秒毎に込められた画像の質感でした。

実際、動きの大きいシーンで1/24秒の画像を観るとぼやけて見えることもありますが、そのぼやけ加減も映画の質感の一部と捉えられた訳です。

その結果、デジタルシネマでも毎秒24フレームというプロセスが踏襲されることになりました。

しかし、技術の進歩に伴い様々な映像表現の可能性が拡がるようになり、映画制作者の間でも色々な試みをすることが増えてきました。

ここで鍵になるのが最近よく耳にする『没入感』という概念です。

映画鑑賞における没入感

人が映画を観る際、何かしら自分自身が映画の中に入り込んだ感覚に浸ろうとしますが、現実の感覚とのズレが小さくなる程、より深い没入感が得られると考えられています。

没入感に寄与するものとして、視覚効果だけでなく、音響効果や(座席の)振動などが挙げられますが、ここでは特に視覚効果に絞って分類します。

分類効果没入感
解像度スクリーンの大きさとスクリーンからの距離にも依存しますが、多くの場合、2Kと4Kの違いは知覚可能です。++
色/色域白黒からカラーになり格段に現実感が高まりましたが、色の使い方はむしろ作品毎の芸術性に関連するところが大きく、没入感とは直接結び付かない要因と考えるべきでしょう。+ / –
明るさ/暗さ/階調暗部での繊細な表現や明暗の大きなシーンの描写により、より現実の光景に近い感覚を得ることができます。
ドルビーシネマではこの効果が強調される映像が作られています。ハイダイナミックレンジ (HDR) と呼ばれる手法もこれに分類されます。しかし、映画館という環境に最適な条件については業界内で議論、検討が続いており、明確な指針は得られていない状況です。
+
視野を覆う割合視野を覆う割合が高い程、映像との一体感が増し、没入感は高まります。
フィルム時代のシネラマ上映ではこの効果を最大限に活かした上映が行われていました。最近ではIMAXやドルビーシネマなどのプレミアムラージフォーマット(PLF)上映がこの効果を期待するものだといえます。
+ + +
立体視 (3D)右眼と左眼の映像の視差により擬似的な立体感覚を得るものですが、効果には個人差があり、没入感を得られる人もいれば、まったく受け入れられない人も一定数いることは無視できないところです。+ / – –
フレームレートフレーム更新速度と共に現実の世界を見ている感覚に近付きますが、毎秒120フレーム以上では人間の目には実効的に大きな改善は感じられないと言われています。+ + +
周囲の光劇場内の誘導灯、壁や客席からの散乱光、3Dメガネの散乱光、不用意な明るさの字幕、スマホの光など、すべて没入感を損ねる要因となります。– –

これらの効果はすべての作品の上映に共通するものではなく、映画制作者の意図により適宜組み合わせて使用されます。例えば、白黒作品のように意図的に色を使わずに映像表現をするのは今日でもよく見掛けられます。

アン・リー監督は前作『ビリー・リンの永遠の一日』を初めて4K/3D/120フレームで制作しました。当時、特殊上映設備によるサンプル映像を観る機会に併せて、アン・リー監督の話を聞く機会があったのですが、戦場での銃撃戦のシーンでは手元に着弾したかのような感覚が異常に生々しく、地面から舞い上がる砂埃を吸い込みそうな感覚を覚えたのを記憶しています。

アン・リー監督はこの上映条件で公開したかったのですが、当時4K/3D/120フレームの映像を上映できる設備は殆ど導入されておらず、プレミア上映の際と中国の一部の劇場を除いて、監督の意図しない品質(2K/3D/60フレーム若しくは2K/2D/24フレーム)で上映されることになってしまいました。

今回再び4K/3D/120フレームで制作された『ジェミニマン』でしたが、Dolby Cinema の普及により 2K/3D/120フレームで上映できる劇場が増えたものの、それ以外は『ビリー・リン』の際と同様の状況で、2K/3D/60フレームと2K/2D/24フレーム(通常上映)となりました。

とはいえ、日本では今回初めて 2K/3D/120フレームという上映を体験できる機会が提供されることになったのはよろこばしい状況といえるでしょう。

※一部メディアにおいてドルビーシネマでは4K/3D/120フレーム上映が行われているという記述があるようですが、これは誤りですのでご注意ください。4K/3D/120フレームと2K/3D/120フレームには体感できる違いがあります。4K/3D/120フレームでの上映が行われたのは、特殊上映機器を導入している中国の一部の劇場だけで、これらはドルビーシネマではありません。

実際の上映フォーマットへの変換

実際の上映フォーマットに合わせてオリジナルの映像を変換する必要がある訳ですが、フレームレートの変換は容易ではなく、上映設備の特性に合わせて異なる調整が必要になります。これを誤ると観るに堪えない不自然な動きの映像になってしまいます。

(120fpsから60fpsや24fpsだと、整数倍なので合成する割合を変えるだけで簡単にできるじゃないかと思われるかも知れませんが、そう単純には行かないのです。)

これを支える技術: ShowscanからMagiへ

ハイフレームレートに対する挑戦は実はフィルム時代から行われてきました。そして技術と経験の積み重ねを経て4K/3D/120フレームの制作が可能になりました。ここで忘れてはならないのが近代映画制作における視覚特殊効果のレジェンドともいえるダグラス・トランブルの功績です。

ダグラス・トランブルがハイフレームレートに目を付けたのは70年代後半のことでした。70mmフィルムを使い毎秒60フレームで、撮影から上映に至るシステムを完成させ、多くのテスト映像を制作しました。しかし、これを広く普及させるには至らず、一旦はお蔵入りしてしまうことになりました。

新たな挑戦の切っ掛けになったのはデジタルシネマの登場でした。カメラもプロジェクターもデジタル化され、Showscan Digitalとして3D/120フレームでの撮影と上映が可能となり、フレームレート変換に関わる様々な技術検証が行われました。

これらの検証をもとに Magi(マジャイ)という制作プロセスを確立し、今回の『ジェミニマン』の制作でも活用されました。このプロセスにより、4K/3D/120フレームで制作された映像から、上映機器に合わせた様々なフォーマットの映像に変換できるようになった訳です。

ハイフレームレート上映は何故流行らない?

このように視覚的に圧倒的な没入感を与える方式として、技術的には成熟しつつあるハイフレームレートですが、中々普及が進まない理由を考えてみたいと思います。

作品数が少ない

ハイフレームレートでの制作に関心を示している映画監督といえば、『ホビット』を48フレームで制作したピーター・ジャクソン監督がいますが、新作での採用の予定はなく、『アバター(続編4作)』の60フレームでの制作を表明しているジェームズ・キャメロン監督ですが、他の作品での採用予定は無さそうです。

いずれも人気監督ですが、最も積極的なアン・リー監督を合わせても、今の状況だと数年に1作品しか新作として公開される作品が出てこない見通しなので、これでは知名度を上げるのも中々難しそうです。

作品数が少ないとこの特殊上映に対応した上映機材の導入もなかなか進まず、上映機会が増やせないということは配給会社としても積極的な導入に踏み切るのはむずかしいということにもなります。

違いが分かりにくい

もう一つの問題はこの方式自体のブランディングの拙さということになるでしょうか?

今回新たに『ハイ・フレーム・レート/3D+ in HFR』といったロゴのようなものが作られたようですが、このロゴから今回採用された技術の特徴、凄さは残念ながらまったく伝わってきません。

オリジナルの4Kの解像度は消え去り、毎秒120フレームと60フレームのバリエーションの違いも分からず、これまでの3Dの改良版?くらいの印象しか伝わりません。

4K + 3D + HFR 抱き合わせの失敗

アン・リー監督の拘りもわかりますが、その結果またしても HFR 本来の視覚効果を広くアピールする機会を逃してしまったのは残念な限りです。

より多くの観客に、HFR の驚くべき感覚を焼き付けたかったならば、2K/2D/60フレームか120フレームを主たる配給フォーマットとして使用すべきだったでしょう。

メーカー社員でも。。

実は違いを正確に理解できていないのは観客だけではありません。上映機材メーカーの社員でも極一部の専門家しか正しく回答できないという実態もある様です。

業界内での理解、合意が進むには果てしない道のりがありそうですが、表現方法としてとても興味深い技術であることは間違いないと思いますので、今後の進展に注目し続けたいところです。

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日本語版 デジタルシネマ名前付け規則 V9.6.1 公開

デジタルシネマの運用にいくつか新しい技術が加わったことにより名前付け規則もISDCF での議論を通じて改訂されてきましたが、そろそろ一旦落ち着いたようなので、日本語版も更新しました。

『日本語版 デジタルシネマ名前付け規則』が初めての方はこちらのリンクからお読みください。すでにご利用中の方はこちらのリンクからご利用ください。

V9.5 からの主な変更点

V9.5 からの主な変更点は、

  • 作品の分類に EPS を追加、並びに CPL メタデータとの対応関係を追加(付録 3
  • 没入型音響形式に関する記述方法の整理(付録 4
  • CPL メタデータの拡張(付録 12

です。

作品の分類に EPS を追加(付録 3

EPS というのは「エピソード」を短縮したものですが、昨今のネットストリーミング系のスタジオの台頭とも相まって、連続テレビドラマのシリーズを上映するという例が出てきています。

主タイトルは同じでも第何シーズンの第何話という形で区別したい場合にこの属性を使用することを想定しています。

ここで注意したいのは、「スター・ウォーズ」や「ワイルド・スピード」の第何作目のような場合にはこの属性を使うのではなく、従来の FTR を使います。

CPL メタデータとの対応関係を追加(付録 3

SMPTE DCP の CPL 中に記述される CPL メタデータとの対応関係がより細かく記載されるようになりました。

但し、マイナーな項目の中には名前付け規則と完全に対応していない項目もあり、SMPTE DCP と Interop DCP が混在する状況では、現場での注意が必要かも知れません。

没入型音響形式に関する記述方法の整理(付録 4

没入型音響方式の SMPTE 技術標準が固まり、市場導入の準備が整いつつありますので、名前付け規則でもその記述方法について、若干の整理が行われました。

日本ではまだ導入劇場も限られていますが、従来の Atmos、DTS-X、Auro の各方式の記述に加えて、新たに標準規格として定めされた SMPTE の IAB (Immersive Audio Bitstream) を表す記述が導入されました。

CPL メタデータの拡張(付録 12

新たに追加された付録ですが、『デジタルシネマ名前付け規則』の表面的には影響を与えるものではありません。

但し、SMPTE DCP を作成しようとする制作者は注意が必要ですし、上映システムを設計するメーカーも対応が必要です。

以上が V9.5 からの主な変更点になります。

ご不明な点などありましたら、お気軽にお問い合わせください。

最後に余談ですが、この日本語訳はオリジナル版の HTML のソースを書き換えているため、オリジナルのウェブ作成ツールに依存したレイアウトを保持しきれず、細かい調整を入れております。読み辛い箇所などありましたら、併せてお問い合わせよりお知らせください。

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ドルビーシネマ、MOVIXさいたまにオープン、国内首都圏初

当初、2018年中に日本初導入を目指していた松竹マルチプレックスシアターズでしたが、T-JOY博多に遅れること5ヶ月、首都圏初となるドルビーシネマがついにMOVIXさいたまにオープンしました。

早速体験してきましたので、先行する劇場との比較も交えながらレポートします。

劇場の仕上がり

ドルビーシネマが設置されたのはMOVIXさいたまの元々は11番スクリーンだった場所のようですが、劇場に入る際にまず最初に気付くことがあります。

入り口通路壁面のプロジェクションがない!?

通常ドルビーシネマへの入り口から客席に向かう通路に設けられている壁面へのプロジェクションが、手前の共用通路に設けられており、ドルビーシネマに入る際のワクワク感が殺がれてしまっているのが少し残念です。(非常に細かい点ですが、ドルビーシネマの設計上、極めて珍しい作りです。)

心配しながらも一旦劇場内に入ると、内部は概ね一般的なドルビーシネマの作りになっているようです。

必要十分にゆったりした座席

座席の配置は一階席のみのスタジアム形式で、IMAX よりも緩やかな傾斜に配置されています。

場内に特別席はありませんが、全席簡易リクライニングながら、人工皮革のような素材で、個別に左右の肘掛けが付いているので、隣の人の肘を気にすることなく、程々にゆったりと映画に集中することができるシートだと感じました。

スクリーン、スピーカー、その他、概ね標準的なドルビーシネマの仕様通りか

スクリーンは樹脂コーティングをしたシートを湾曲に設置するドルビーシネマ共通の仕様のようです。

スクリーン横の非常口灯は上映が始まると消灯するので気になりません。国、地域によっては、消防法上、上映中も非常口灯を消せないドルビーシネマもありますので、この点においては、日本では映像に集中することができそうです。

Dolby Atmos 用のスピーカーは特に照明で浮かび上がらせるような細工はなく、目立たないように設置されていました。(照明を点灯していなかっただけなのかも知れません。)

本編上映体験

今回体験したのは正式オープン前日のお披露目上映で、昨年公開された “Avengers: Infinity War” (2D字幕版) を特別料金 1,000 円で観賞しました。

おそらく自分を含めて観客の殆どはこの作品自体は既に観賞済みで、ドルビーシネマで違いを体験しようとしていたようです。

客層としては、20~30代の映画マニア風の姿が多かったのですが、加えて40~50代の業界関係者風の姿も相当数見受けられたように感じました。(あくまでも印象です。)

映像の印象

作品自体の映像の特徴として、夜間や宇宙にきらめく閃光や色とりどりの鮮やかな発色など、Dolby Vision 本来の実力を効果的に駆使した画作りが行われた作品で、ほぼ制作時に意図された通りの映像が再現できていたのだと思います。

一部のドルビーシネマでは感じられる、レーザー光によるスペックル(ギラギラした光のノイズ)は全く感じられませんでした。

また、ラストクレジットなどでは顕著に現れる RGB 映像の色ずれもまったく感じられませんでした。

米国に多数稼働中のドルビーシネマの中には、機材調整や設置状況が悪く、色ずれやレーザースペックルを呈する場所も散見されますが、今回設置直後ということもあり、本来のドルビーシネマの品質が実現されていたと感じました。

今後も定期的なメンテナンスを怠らず、最高の上映品質を提供してもらえることを願っています。

音響の印象

Dolby Atmos の実力はよく承知しており、その効果は発揮されていたのだと思いますが、作品自体のシーンの展開が極めて忙しく、Dolby Atmos 独特の音源の移動を手に取るように感じるようなシーンは殆ど記憶に残りませんでした。

これは良くも悪くも作品と一体化した立体音響が実現されていたのだと解釈したいと思います。

少なくとも上映前の Dolby Atmos デモクリップでは、一般的な Dolby Atmos の効果は再現されていたようです。

字幕の印象

さて、日本でドルビーシネマを楽しむ際に最も気になる点が字幕です。

字幕というのは本来の映像に重ねて表示されるので、使い方を誤ると本来の映像の品質を台無しにすることがあります。

映像の基本品質が高い Dolby Vision を楽しむ際には字幕はないに越したことはありません。

それでも止むを得ず字幕を入れる際には、文字の可読性を確保しながらも、可能な限り本来の映像を損なうことのないように、文字の明るさ、色、大きさなどを適切に調整することが要求されます。

以前に『ファンタスティック・ビースト』 “Fantastic Beasts and Where to Find Them”[IMDb] の日本語字幕版をドルビーシネマで観た際には、暗いシーンでの字幕の所為で本来の美しい映像がぶち壊されていましたが、今回はどうだったのでしょうか。

– 字幕の明るさ

今回の字幕は、ドルビーシネマの最高輝度ではなく、通常の上映と同等レベルの輝度に抑えられているようで、字幕がまぶしいと感じるシーンはさほど多くはありませんでした。

しかし、いくつかのシーンでは、ほぼ真っ暗または完全に真っ暗なシーンでも、他のシーンでの字幕と同じ明るさの字幕がデカデカと表示され、スクリーンからの反射光により館内照明を付けてしまったかと思うほど客席が明るく照らされることもありました。本来真っ暗なシーンであったにも関わらず、です。

– 字幕の大きさ

さらに気になったのが、字幕の不必要なまでの大きさです。

一般に日本語字幕は他言語の字幕と比べて倍程度の大きさの文字が使われますが、文字が大きいということは、その分、光の量も多くなり、本来の映像の品質を更に損なう要因になります。

果たして、現状のような巨大な文字が必要なのか、改めて考え直してもらいたいところです。

– 字幕のギザギザ

一方で、映像の画素サイズによるギザギザが字幕の縁に見られることが多く、マスタリング方法の改善が必要なところです。

まだまだ改善の余地はありそうですが、本来のドルビーシネマの品質を安心して楽しめるように、制作関係者の関心と努力を期待します。

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横浜みなとみらい地区にミニシアターオープン

3Dだの、4Dだの、プレミアムスクリーンだの、大掛かりで高価な上映システムが注目されることが多い中、落ち着いて良質な映画を楽しむことができそうな劇場が、4月12日、横浜みなとみらいにオープンしました。

関連情報

キノシネマ/横浜みなとみらい

新しく映画館ができたのは、横浜みなとみらいの居住地区と商業地区が混ざり合うみなとみらい大通りに面した高層マンションの2階です。

1階にはスターバックスとTSUTAYAが入るすぐ上のフロアーです。

このフロアー、以前はTSUTAYAのレンタルショップが入っていましたが、ここを丸ごと改装して、3スクリーンからなる映画館に生まれ変わりました。

客席数

劇場の客席数は111席が2館と55席が1館(いずれも車椅子2席分のスペースあり)からなります。

布製のスクリーン

スクリーン幅は5〜6mとこぢんまりとしていますが、適度に視野をカバーできる大きさなので、ドラマのような落ち着いた作品を観るには十分な没入感が得られるでしょう。

何よりも嬉しいのはスクリーンの素材です。昨今の樹脂製の高輝度のスクリーンとは異なり、繊維製(布地)のスクリーンをフレームに張り付けて固定しているので、柔らかい乱反射による目に優しい自然な映像を楽しむことができます。

この点も落ち着いた没入感を与えるのに一役を買っていると言えるでしょう。

天井設置のプロジェクター

既設の建物の1フロアーの空間を有効利用するための工夫といえると思いますが、上映機材(プロジェクター等)は映写室ではなく天井にスッキリと収納されています。

冷却ファンの音も上映を妨げることのない殆ど気にならないレベルに抑えられています。

必要十分な音響

小さな劇場でありながら、7.1chの音響に対応しているようで、落ち着いて良質な作品を楽しむには十分な音響でしょう。

一応 3D 対応も

果たしてこの劇場に必要なのかは疑問ですが、万が一 3D 作品を上映したい場合にも対応できるように、一応上映システムの対応はできているようです。

ただし、通常の 2D 上映の画質を損なう偏光方式ではなく、液晶シャッター方式のXpanD(エクスパンド)社製のシステムが導入されているようです。

上映作品

一番気になる上映作品のラインナップですが、所謂アートシアター系の作品を多数取り揃えているようです。

巷には、大スクリーン、高コントラスト映像、立体音響で楽しみたい作品もありますが、このような場所の方が落ち着いて観賞できる良質な作品も沢山あります。

今後の上映予定をみても、大手シネコンではあまり観る機会のない作品を続々と準備してくれているようなので、個人的にも観客として応援していきたい映画館になりそうです。

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CinemaCon 2019 (4/1-4)

今年も恒例のシネマ業界最大のトレードショー CinemaCon に参加してきました。昨年の報告に続いて、今年も気になった話題を並べてみます。

先行き不透明な各種プレミアム上映方式

多種多様な特殊上映方式が乱立する状況は依然として混迷を深めており、導入を検討する劇場主 “theatre-owners” にとっても、一般の映画愛好家 “moviegoers” にとっても、分かりにくい状況が続きそうです。

画面の大きさだけが重要なのか、解像度は要らないのか、明るければ良いのか、暗さは重要ではないのか、画面が三面あると嬉しいのか、本当に 3D が必要なのか、座席が揺れて映像を楽しめるのか、どんな音響が欲しいのか、上映中にどんなものを食べたいのか、映画館なのかアミューズメントパークなのか、そもそも『普通の上映』と比べてどのように価値が高い(或いは低い)のか、改めて問い質したくなることが沢山あります。

新規導入や設備更新を検討中の劇場様には、是非とも上質な映画体験を提供するにはどの方式が適しているのか、慎重に検討して頂けることを願うばかりです。

レーザー化:RGB、蛍光励起、レトロフィット

業界全体としてプロジェクター光源のレーザー化の流れに変わりはありませんが、RGB方式、蛍光励起方式、そしてランププロジェクターの光源変更(レトロフィット)という選択肢が横並びとなっています。

各方式とも一長一短があり、唯一ベストという方式はなく、劇場毎の置かれた状況に応じて適切な選択が求められる状況といえます。

シネマ LED ディスプレイ:Samsung vs. Sony

昨年はメインブースでミニシアターを作ってお披露目をした Samsung Onyx でしたが、既に世界各地で商業上映に使用されていることもあり、今年はメインブースでは専ら個別商談に勤しんでいるようでした。

一方の Sony Crystal LED は昨年 DCI 認証を取得したものの、特に展示も説明もなく、今後の展開について不安を感じさせました。

両者ともそれぞれに技術課題が山積している状況は共通していますが、その取り組み方には大きな隔たりがあることも感じることができました。

スタジオ動向:消えた Fox

一昨年に Disney による映画テレビ部門買収の話が公になって以来、いつかこの日が来ることは予想していましたが、ついにこの3月手続きが完了し、CinemaCon のスポンサーからも名前が消えてしまいました。ハリウッド6大メジャーの一角として長らくその名を連ねてきた Fox でしたが、デジタルシネマの技術要求を取りまとめる DCI (Digital Cinema Initiative) からもその名が消えてしまいました。

例年お楽しみのスタジオ各社の新作紹介のイベントですが、ハリウッドメジャー『5社』の中では唯一 Sony Pictures のイベントが無かった一方で、Lionsgate、NEON、Amazon Studios がそれぞれ新作本編の上映会を催し、意気込みの強さを感じさせてくれました。

劇場向けにも一部作品の提供を始めた Netflix ですが、まだ CinemaCon とは微妙な距離を保ちながら気配をうかがっているようにも見えます。

おまけ:Dolby Cinema による新作上映

今回、ホテル内の劇場に設置した仮設の上映設備であったにも関わらず、Dolby Cinema 相当の上映環境が作り込まれ、実際に数作品の新作本編は贅沢にも Dolby Atmos+Vision でマスターされた DCP で上映されました。

こちらには記載できなかった話題もありますので、ご興味のある方はこちらより個別にお問い合わせください。

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ソニーデジタルシネマ・プレミアムラージフォーマット、続報:一号館、ラスベガスにオープン

さて、2月にご報告したように、ソニーデジタルシネマ・プレミアムラージフォーマット “Sony Digital Cinema Premium Large-format” の一号館が4月5日、ラスベガス市内のショッピングモール Boulevard Mall [GoogleMaps] にオープンしました。

劇場オープン初日(CinemaCon 2019 最終日の翌日)、商業上映第一回目の上映(”Shazam!”[IMDb] )を体験することができました。

Galaxy Theatres at Las Vegas Boulevard Mall, Nevada

今回導入先となったのは、米国西部5州に展開する中小規模の劇場チェーン “Galaxy Theatres” がラスベガス市内のショッピングモールに新規にオープンした9スクリーンのシネマコンプレックスです。

以下、写真のスライドショーでご覧ください。

以上の通り、上映システムの構成は概ね前回の分析通りだったので、あまり付け加えることはありません。

様々な可能性を秘めた上映システムであると同時に、多くの課題を抱えた上映システムでもあるので、ソニーが今後シネマ業界に対してどのような動きをみせてくれるのか、大いに気になるところでもあります。

IMAX や Dolby Cinema の対抗馬になる?

残念ながら、現時点では IMAX や Dolby Cinema のように上映システムの特性を引き出すための DCP が提供される訳ではないということです。

すなわち、音響に関しては Dolby Atmos の立体音響を楽しむことができますが、映像に関しては一般上映と同じ DCP が使用されるので、リクライニングシートで大画面を楽しむ。現時点でそれ以上の期待はしない方が良いかも知れません。

そもそもブランド名は?

事前の発表では “Sony Digital Cinema Premium Large-format” という長い呼び名が使われていましたが、結局劇場には “Sony Digital Cinema” というサインしか見当たりませんでした。

これならこれでシンプルで良いと思いますが、そうすると従来のソニー製の上映システムとはどのように区別して呼ぶのか、判然としません。

(”IMAX” がその名のもとに優劣品質の異なる様々な上映システムを展開しているのにも似ています。)

この辺り曖昧にせずに是非とも明確な定義とわかりやすいブランディングを期待したいところです。

上映システムに関するコメントはこのくらいにして、実際の上映を体験した感想を綴ってみます。

Shazam! / 3D の観賞体験

期待のこけら落としの上映品目は “Shazam!”[IMDb] だったのですが、上映スケジュールの関係で、残念なことに 3D 上映を観ることになってしまいました。

折角なので 3D 方式に関して注記しておきましょう。この上映システムでは波長フィルターを使用する Dolby 3D 方式ではなく、円偏光フィルターを使用する RealD 方式が採用されています。

Dolby 方式よりもメガネが軽く、自分のメガネの上にも掛けやすいのは良いですが、それでもやはりレンズと顔の間の散乱光による不快感は禁じ得ないものでした。

折角の 4K 解像度で高コントラストの上映システムですが、2K/3D の品質しか楽しむことができなかったのはとても残念でした。

この上映システムの真価を発揮するには多くの課題が山積していることを実感して劇場を後にすることになってしまいました。