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シネマテクノロジー、ゆく年くる年 (2022)

コロナ禍は収束したか?

新作の公開も平時並みに戻ったような印象がある一方で、シネマテクノロジー(映画上映技術)という視点では、新しい動きの乏しい一年だったかも知れません。

ネットストリーミングとシネマ

ネットストリーミングとシネマ(劇場上映)の力関係においては、それぞれの特性の優位性を保ちながら一定のバランスの中で落ち着いてきたような印象です。

両者の相乗効果の中で、より多様性に満ちた映画鑑賞の機会が増えることを期待します。

関連記事:CinemaCon 2022 (4/25-28)

技術規格・登録情報の更新

・DCPの名前付け規則

国内事業者の登録が増えない一方で世界各地の事業者の更新は随時行われています。

長らく予告されてきたATMOS版のDCPの属性名が間も無くIABに変更されそうなので、現場での注意が必要かも知れません。

それ以外、全体的な規則としては大きな変更もなく安定して運用されており、このサイトで提供している日本語版も定常的にご利用頂いているようです。

本家 ISDCF のサイトではページデザインの更新など、細々と手が加えられてきましたが、慣れたページ構成が変更されるのは利用者にとって必ずしも使い勝手が良くなる訳ではないようです。

日本語訳のページでは敢えてデザイン、構成の変更を控えています。

関連情報:日本語版 デジタルシネマ 名前付け規則

・高輝度高コントラスト上映および直視型上映システムの認証はまだ先

所謂、HDR 上映と LED 上映のことですが、両者の上映品質に関する規格は発行されたものの、システム認証のための評価規格は決まっておらず、DCI として正式な認証システムが登場するのはまだまだ先のことになりそうです。

市場には独自規格の高輝度高コントラストの上映を行う劇場とこれに対応した作品も増えてデファクト化が進む中、果たして標準規格に準ずる上映システムや作品は本当に普及するのか懐疑的にならざるを得ません。

一方、3D 上映の上映品質に関する規格、評価基準が定められる見通しは皆無といって良い状況です。

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アバター続編

今年最大の注目を集めているのが、一作目の後、13年の年月を隔てて公開されたアバターの続編でしょうか。

前作公開時2009年には当時の標準的な3D作品の技術 (2K/3D/24fps/4.5fLt) で制作/上映が行われましたが、今回は上映技術の進化に合わせて、一部の上映設備では高輝度(14fLt)高精細(4K)ハイフレームレート(48fps)3Dでの上映が可能になりました。

ただ、今回使用された上映技術の多くは2016年の “Billy Lynn’s Long Halftime Walk” と2019年の “Gemini Man” が公開された時には既に実現されていました。

今回の新作公開に向けて費やされた制作技術と上映技術の試行錯誤の時間を考えると、劇場上映においてこれらの技術を活かした作品を提供することの難しさが感じられます。

このような超大型の話題作が登場するのはシネマ業界にとってよろこばしいことではありますが、今後もこのような作品が商業的に継続できるように、更なる制作技術と上映技術の進歩を期待したいところです。

関連記事:新旧『アバター』で比べる上映技術の変化

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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