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シネマテクノロジー、ゆく年くる年 (2019)

シネマ技術に関する1年前の予想を振り返りながら、2020年を予想してみたいと思います。

LED シネマディスプレイ

Samsung Onyx、Sony Crystal LED に続いて、LG からも DCI 認証を取得したシネマディスプレイが発表され、シネマ LED 市場の立ち上がりに新たな期待がもたらされました。

しかし、昨年指摘した様々な課題に対する業界内での進展は遅く、シネマ LED 市場の本格的な立ち上がりにはまだまだ月日を要する状況と言えます。

参入している各社とも社運を賭けた製品というよりも、業界に対してアピールを続けるための製品という印象もあり、今後の展開については年単位での長い目で様子を見ていく必要がありそうです。

ドルビーシネマの字幕品質基準

国内のドルビーシネマにおける字幕については随所で指摘してきましたが、その後改善されたのでしょうか?

12月に公開された『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で確認したところ、残念ながらまったく改善されていないようでした。

明るいシーンではあまり気になりませんが、暗いシーンではセリフが発せられる度に眩いばかりの字幕がドルビーシネマ本来の主映像のディテールを損ねることになっていました。

この作品、事前に字幕のないオリジナルバージョンでドルビーシネマの主映像のすばらしい品質を確認していましたが、日本で公開されている字幕版の品質は到底受け入れられるレベルのものではありませんでした。

今後の国内でのドルビーシネマの展開について不安を残すこの状況は残念な限りです。

Netflix の台頭

予想通り Netflix から多数の優れた作品、大作が公開されるようになった一年でした。

興味深いのは「ネット配信」と「劇場配給」に対する微妙なバランスです。

この辺りの立場の違いから昨年まで主要フェスティバルの受賞競争から排除されていましたが、劇場での興行を主としてきた従来の映画業界と新たな関係を築こうとしているのが興味深いところです。

まだまだ目が離せない年になりそうです。

SMPTE DCP に移行できるのか?

世界各地域で着々と進む SMPTE DCP への移行ですが、果たして日本では移行できるでしょうか?

一年前から状況は変わっておらず、まったく見通しが立たない状況です。

シネマ技術後進国となっている日本市場ですが、上映品質に対するこだわりだけは失わないよう心掛けたいところです。

以上、一年前と比べて期待した程の変化がなかったのが些か残念ではありますが、日本でもより良いシネマ体験ができるようになることを願いながら、新しい年を迎えたいと思います。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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