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映画館営業再開後の課題

首都圏の映画館の営業が順次再開されてきましたが、感染の脅威は消え去った訳ではないので、以前のように映画館での上映を楽しめるようになるにはまだまだ課題が残されているようです。

感染を防ぐ手立てを施しながらどのように映画を楽しむことができるでしょう。

座席間隔の確保

4月のシャットダウン前にもいくつかの劇場チェーンで導入されていた座席制限ですが、多くの劇場チェーンの予約システムで類似の方法で座席間隔を確保するように変更されているようです。

最も一般的な仕組みとしては、座席指定の画面で隣接する前後左右の座席を一席飛びに予め埋めておく方法で、所謂『市松』状(あるいは『チェッカーボード』状)に固定された座席配置でしか座席指定ができないようになっています。これにより、結果、座席数を定員の50%に制限することになります。

劇場によってはさらに座席を間引いたり、一列飛びに座席を開けて、定員の25%に制限しているところもあるようです。

これらの方法により上映中他人との距離を一定以上に保つことができるのは安心感につながります。

一方、これらの方法では他人との距離だけでなく、家族やカップルの距離まで無条件に引き離すことになります。

映画館に足を運ぶ理由の一つとして、家族やカップルとの親密な時間を楽しむことがあることを考えると、これなら家で映画を観る方が良いという判断にもつながりかねません。

以前ご紹介した米国オースティンの劇場の例では家族やカップルは隣接して予約できるようにしながらも座席数を25%や50%に制限できるように座席予約システムが設計されています。

正しいソーシャルディスタンス(Social Distancing)の感覚は今後長期に渡り意識向上が求められることになる可能性もあり、映画館にはより洗練されたシステムの導入を期待したいところです。

衛生管理の徹底

最近の映画館は清潔感にあふれる設備が多いですが、以前にもまして清掃などが徹底されている印象を受けます。

上映中のマスクと飲食

一つ違和感を覚えるのが上映中もマスク着用を義務付けながら、売店で購入したスナック類の飲食が認められているところです。

これでは一口食べる度に雑菌が付着していると思われるマスクを手でずらして、その手で食べ物やストローを口に運ぶという動作を繰り返すことになり、不必要に雑菌を体内に取り込む危険性が増えてしまいます。

また、プラスティック手袋を提供してくれるところもあり、気持ちはありがたいのですが、どの手でマスクを触り、どの手で食べ物を口に運ぶのか、現実的で効果的な使用方法が思い付きません。

上映中にマスクの着用を義務付けるのは現時点では止むを得ないかと思いますが、飲食する際には畳んで袋に収めるなどして、飲食物がマスクに触れるリスクを低減すべきと考えます。

その上で、観客としてはできるだけクチャクチャと音を立てず(唾を飛ばさず)静かに飲食をする努力が必要かと思います。

キャッシュレス化の加速

衛生管理の点から気になるのが現金の取り扱いです。

日本の紙幣や硬貨は諸外国と比べて多くの場合清潔に見えますが、不特定多数の手に掴まれたお金は雑菌にまみれているという前提で取り扱うべきでしょう。

今日最も効率的かつ衛生的に金銭をやりとりする方法は非接触の各種電子マネーを使用することです。

接触型のクレジットカードも衛生的とはいえません。

映画館での現金使用を完全に取り止めれば、これを取り扱う従業員の除菌作業も簡素化できるでしょう。

映画館よりも市中マナーが気になる?

これまで訪問した映画館では現状できる限りの対策が取られており、来場客のマナーも常識的なレベルだと感じられ、ひとまず安心しています。

その一方で気になったのは街中で行き交う人々との落差でした。

市中ではマスクもせずにくしゃみをする人も散見され、映画館の中よりも感染の危険を感じることもあります。

少なくとも映画館に来場される方々にはそのような人が出ないように自分自身も心して楽しみたいと思います。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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