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映画館の紫外線殺菌

コロナ禍の収束に見通しが立たない中、映画館のニューノーマルとして様々な対策が講じられていますが、シネマプロジェクターのクリスティから映画館の紫外線殺菌のための製品がアナウンスされましたのでご紹介します。

参考情報

各地の状況

国内では記録更新のヒット作が生まれるなど、一部ではコロナ禍は何処へ行ったのかと不思議な状況になっているようですが、世界的には多くの国々で未だ営業再開を見合わせています。

映画館に観客を呼び戻すには観客の感染リスクと感染不安を取り除く必要があるということで、各社様々な取り組みが行われているようです。

Christie® CounterAct

そこでクリスティとしての取り組みがこのChristie® CounterActという『対策』のようです。

クリスティの親会社はプロジェクターランプでも知られるウシオ電機ですが、そこで培われたランプ技術に最新の科学的な知見に基づく効果を組み入れて、新型コロナウィルスにも効果のある紫外線照射器を作り上げたようです。

Care222®

商標のCare222®は使用する紫外線のピーク波長222nmから取られているようです。

紫外線といえば、皮膚や眼など人体に有害な紫外線(UVA/UVB/UVC)がよく知られていますが、一般的なUVCよりさらに短い波長(222nm)の遠紫外線(far-UVC)は人体への影響が少ないにも関わらず、効果的に殺菌効果が得られるという研究報告があるそうです。

これを使用することにより、人が集まる営業中も安全に照射を続けられるとのことです。

また、ブラックライトのように可視光の蛍光を発生させる可能性も低いため、ロビーやトイレだけでなく、上映中の劇場内でも使用できる筈なので、壁や天井の各所に設置することで、営業中の映画館全体で持続的に効果を得ることができそうです。

人体への影響と実際の殺菌効果については長期的な検証が必要ですが、感染リスク軽減のためのひとつの方法として、期待を込めて見ていきたいと思います。

国内での導入予定はまだ発表されていませんが、来年1月から量産が予定されているそうなので、今後の報告を待ちたいと思います。

衛生観念が不可欠

とはいえ、これはあくまでも対策のひとつであり、万能ではあり得ません。

以前『映画館の抗菌対応』にも書きましたが、感染を防ぐ上で最も重要なのは施設を使用する一人ひとりの人間の衛生観念とそれに基づく節度ある行動です。

マスクをしても、アルコール消毒をしても、紫外線を照射しても、基本的な衛生観念を欠く行動により、どんな対策の効果も無に着すことを忘れずに、じっくり映画を楽しみたいものです。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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