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デジタルシネマ適合性テストプラン改訂版 DCSS CTP1.2.1 発行

デジタルシネマシステムの適合性を認証するためのテスト手順を規定する文書 (DCSS CTP) が改訂されました。

今回のバージョンは2014年に発行されたCTP1.2に加えられた修正項目をひとつの文書にまとめ込んだもので、新たに内容的な追加、変更はないということです。

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今後開始されるCTP認証テスト(現在進行中のテストは含まない)はすべてCTP1.2.1に基づいて執り行われることになります。

今後の予定

今後、技術内容に追加、変更が加えられる予定として、以下の改訂が計画されています。

  • CTP1.3(2020年末):外部メディアブロック(OMB)、複数メディアブロック(MMB)を含むシステムへの対応
    • 外部メディアブロックはAtmos、DTS-Xのような没入型音響方式に対応する上映システムで採用されているアーキテクチャーです。
    • 複数メディアブロックは複数のシネマサーバーが同期して動作するような上映システムです。
    • これらは現行のCTPではテスト対象にはなっていませんが、上映システムメーカー等の独自の検証の下で、機能拡張として提供されています。
  • CTP1.4(時期未定):複数メディアブロックを含むシステムのテスト仕様の拡充
    • 上映システム内のインターフェースを規定し、例えばメディアブロック単体でもテストできるようにすることを目指す。

新技術として気になる直視型上映システム(LEDシネマ)とレーザー光源上映システム(レーザープロジェクター)に対するテスト基準ですが、両者とも未だ品質基準も評価基準も固まっておらず、まだまだ時間が掛かりそうです。

そうは言っても、市場にどんどん普及が進む中、後から対応不可能な評価基準が定められてもどうにもならない事態になることも予想されますので、結局は事実上の市場品質基準を文書化して、後追いで承認されるようになるのかも知れませんが、メーカーも劇場も細心の注意を払いたいところです。

DCSSバージョンとCTPバージョンの関係

先日DCSS1.4が公開されたばかりですが、システム要求仕様を記述するDCSSのバージョン番号と適合性テスト仕様を記述するCTPのバージョン番号は同期してふられている訳ではないので注意が必要です。

上映システムを設計する人は常に最新版のDCSSを念頭において設計する必要がありますが、同時に製品発売時に有効なCTPの内容が実際の設計と合致するものになるように、技術動向の変化には絶えず気を配り、柔軟かつ計画的な対応が求められます。

字幕の品質基準

日本での上映で気になる字幕の品質ですが、残念ながら字幕の品質基準に関して追加される予定はありません。

字幕の品質に関しては、

  • 文字の解像度(ギザギザ)
  • (ルビ、縦書き)文字位置のバラ付き
  • 字幕輝度の主映像への干渉

などの問題が挙げられますが、これらに関する評価基準が追加、変更される見通しは、現時点ではありません。

上映作品本編の品質を損なわないためには、DCPの制作時に主映像との干渉を考慮しながら、主映像に焼き込んでDCPを作る必要があります。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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