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新型コロナウイルスによる影響

新型コロナウイルスの感染拡大により既に世界中の経済に影響が出ていますが、シネマ業界も例外ではありません。業界内での動きについて記しておきたいと思います。

世界各地で閉鎖される映画館

当初感染が確認された中国では早くからすべての映画館が閉鎖されましたが、ここに来て感染拡大に歯止めが掛かったことから、一部の劇場で営業が再開されてきたようです。

感染拡大が緩やかな日本では注意喚起や一部での入場制限は行われているものの、現在でも完全閉鎖されている劇場はないようですが、爆発的な感染拡大に対する警戒が叫ばれている中で、安心できる状況にはなさそうです。

感染拡大が治まらない欧米諸国の状況は深刻で、殆どの映画館が閉鎖されています。

米国では NATO(読み:“ネイトー”、全米劇場所有者協会)が米国議会と政府に対して、劇場経営と15万人の劇場従業員の生活を支援するための施策(固定費軽減のための融資保証、従業員に対する税制優遇、閉鎖に関わる費用の軽減、劇場再稼働時に損失回収するための税制優遇)を要求し、また NATO 自身も積立金100万ドルを職を失った劇場従業員のために支出するとのことです。

一方、欧州では UNIC(読み:“ユーニック”、欧州シネマ業界連合)が各国の政府に対して、欧州は『シネマ』誕生の地であり、その文化的な価値を守り続けるべきという信念のもと、このシネマ業界がこれまでに経験したことのない困難を乗り越えるために、今後数ヶ月に渡り可能な限りの支援を行うように要請しました。

ドライブインシアターの復権?

映画館のように閉鎖された空間に不特定多数が密集することで感染拡大のリスクが高くなるのであれば、特定少数毎に隔離された自動車内で映画鑑賞を楽しめるドライブインシアターなら安全だろうということで、一部のドライブインシアターを見直す動きもあるようです。

ただ、現在使用可能な設備は品質・スクリーン数ともに限られており、現行の映画館の収益を置き換えるには程遠いと言わざるを得ません。

新たに設備を作るのであれば、昨今注目を集めている LED シネマディスプレイを使うのが良いのでは?と冗談半分に言う人もいます。

確かにドライブインシアターなら音響はカーオーディオを使用することになるので、LED シネマディスプレイの課題である音響問題を回避することは可能ですが、屋外に恒久的に設置するとなると映像品質、耐久性など解決しなければならない別の課題が噴出しそうです。

ストリーミングサービスによる家庭での映画鑑賞?

より現実的な代替方法として語られているのが、Netflix や Amazon Prime Video などのストリーミングサービスやケーブルテレビ、衛星放送を利用した家庭での映画鑑賞です。

今回の感染騒動よりかなり前からストリーミングサービス専用の公開作品も数多く作られており、将来的には映画館は要らなくなるという極論を唱える人もいます。

ただ、家庭用のテレビ画面やホームシアターシステムで楽しむことができる映像と音声はスペック上は映画館向けのものと比べると多くの点で劣っているため、高品質の映像と音声を重視するマニア層には受け入れられないでしょう。

但し、上映システムが適切に管理されていない映画館の上映品質は家庭用の上映品質に劣る場合もありますので、一概に優劣を付けるのは難しそうです。

何れにせよ、現時点で映画館での上映を置き換えるには数多くの課題がありそうです。

上映作品がなくなる?

日本ではまだ深刻には受け止められていないかも知れませんが、世界的な上映機会の消失に伴い、新作大型作品の公開を半年程度延期する計画が伝えられています。

一部作品は家庭へのストリーミング配信での公開も予定されているようですが、この流れは劇場経営にとって何の助けにもならないのは明らかです。

さらに深刻な懸念として、現在製作中の作品やこれから製作が予定されている多くの作品で公開予定の見直しが迫られており、長期的に大型の娯楽作品など上映作品が不足することを懸念する声もあるようです。

業界慣習的に日本国内で海外作品が公開されるのは世界的にみて遅いのが通常で、多くの国々でほぼ同時に公開される作品でも日本で公開されるのは3ヶ月遅れというのが珍しくありません。(勿論一部の作品は除きます。)

現在公開されているハリウッド系の作品の多くは米国では昨年に公開されたもので、まだ日本での新作公開予定に影響が出ていないように見えます。

しかし、現在の状況が長引くと、欧米の新作映画が届かないという状況になりかねないことも頭の片隅に記憶しておくべきかも知れません。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ鑑賞(劇場での映画鑑賞)回数は1500回を優に超える。

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