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家庭用テレビの映像品質についての議論 – 2019 HPA Tech Retreat

家庭で映像コンテンツを楽しむ環境は年々高品質化していますが、どのようなスペックをどこまで高品質化すべきなのか、業界内でも議論が絶えず、まだまだ収束する気配がないようです。シネマにも共通する課題はある一方で、やはり家庭でシネマを超える体験を実現するのは難しいことを再認識できる議論となっていたようです。

この記事では HPA Tech Retreat から気になる議論を取り上げて紹介します。今年は参加できなかったのですが、メデイア記事から予想通りとも言える現状を垣間見ることができるようです。

議論に参加したのは、国際映画撮影監督協会、UHDアライアンス、ネットフリックス、ソニーの面々で、映像を作る立場、記録する立場、配信する立場、表示する立場の各組織、各会社の考えが述べられたようです。

昨今の製作環境の技術の進歩により、リーズナブルなコストや時間で製作者の意図を反映できるレベルに到達しましたが、家庭に配信する際にはどのようなスペックを実現すべきなのか、まだまだ迷いがあるようです。

画の再現性 〜 色合い、コントラスト、輝度

課題のひとつは画の再現性をどのように実現できるのか。家庭用のテレビではメーカー毎に色合い、コントラスト、輝度設定がバラバラで、画を『作る側のこだわり』と『観る側の好みと環境』をどのようにマッチさせることができるのか、現実的な解決策はまだなさそうです。

フレームレートの不整合

もう一つの課題はフレームレート不整合の問題。一般的に映画は毎秒24フレームで製作されます。文字通り1フレーム毎にこだわりを持って作られています。

しかし、家庭用のテレビでは多くの場合、何らかの形でフレームレートの変換が行われ、実際には存在しない製作者が意図しない画像が表示され、多くの場合、製作者には受け入れ難い違和感のある映像が表示されてしまいます。

家庭とシネマ

家庭での再生機器と視聴環境を揃えることは現実的に非常に困難なので、これらの課題はまだまだ先に持ち越されることになるでしょう。

シネマでは DCI の規定に従うすべての映画館で、一定品質の映像が再現できることになっています。

その一方で、昨今の PLF ブームにより特殊な上映方式が広まることにより、『一定品質』の考え方が成り立たなくなり、再び市場に混乱を呼び込む危険性もはらんでいることを警戒すべきかも知れません。

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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