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直視型上映機器の規格化に向けたDCIの覚書

LEDシネマディスプレイのような直視型上映機器の出現に伴い、これまでプロジェクターのような投射型上映機器を前提としてまとめられていた現行のDCIシステム規格(v1.2)を補完すべく、DCIシステム規格の改訂に向けた覚書が発行されました。

DCI Memorandum Regarding Direct View Displays

既に現行のDCIシステム規格のもとでDCI準拠の認定を受けているSamsung Onyxへの将来的な影響が気になるところですが、これに伴い直視型上映機器に関する業界内の動きが加速されるのは必至でしょう。

最終的に正式なDCIシステム規格として発行されるまで、まだしばらく時間が掛かりそうですが、要件として挙げられた項目は、対応を検討中のメーカー、スタジオ、ポスプロにとって重要なチェックリストとして見逃せません。

直視型上映機器の定義

まず最初に直視型上映機器(“Direct View Display”)とはどのように構成されるのかが定義されています。

  • スクリーン:直視型上映機器として機能するために必要なすべての機構を含むシステム全体を指します。
  • キャビネット:映像を表示する機能を構成するすべての機構を指し、通常複数のモジュールにより構成されます。
  • モジュール:キャビネットの映像表示部分を構成する要素で、通常劇場での修理交換などを行う際の最小単位となり、画素(発光要素)であるピクセルの配列により構成されます。
  • ピクセル:画素として必要な色域の光を発光できる最小の発光要素で、通常、赤、緑、青の3色のLEDにより構成されます。
システム要件草稿

19項目の検討項目がリストされており、まだ草稿ではあるものの、対応を検討する機器メーカーにとっては、製品設計に際して必要な施策を準備する上で、必要最小限の留意すべき項目のリストとなっています。

特に気になる項目としては、HDRへの対応、3Dへの対応、音響要件、セキュリティ要件などが挙げられます。特に音響、セキュリティに関しては従来の投射型上映機器とは基本的な前提が異なるため、機器メーカーは柔軟な発想を持って対応する必要がありそうです。

 

作成者: Yoshihisa Gonno

デジタルシネマ黎明期の2005年から国内メーカーで初のデジタルシネマ上映システムの開発をリード。その当初からハリウッド周辺の技術関係者との交流を深め、今日のシネマ技術の枠組みづくりに唯一の日本人技術者として参画。
2007年から5年間、後発メーカーのハンディキャップを覆すべく米国に赴任。シネマ運用に関わるあらゆる技術課題について、関係各社と議論、調整を重ねながら、自社システムの完成度を高め、業界内での確固たる地位を確立。
2015年からは技術コンサルタントとして独立。ハリウッドシネマ業界との交流を続けながら国内のシネマ技術の向上に向けた活動を続けている。
2018年から日本人唯一の ICTA(国際シネマ技術協会)会員。
プライベートでも「シネマ」をこよなく愛し、これまでのシネマ観賞(劇場での映画観賞)回数は1500回を優に超える。

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